あきらめなかった いつだって

2009年に女優として初めて「国民栄誉賞」を受賞し、現在では日本を代表する女優として、齢90を越えてもなお第一線で活躍している森光子。彼女の人生は必ずといってもいいほど順風満帆とは言えなかった。

「波乱」という言葉よいうよりも、約20年にも及ぶ長い「下積み」の経験が約80年にも及ぶ女優人生の大きな土台としてある。「放浪記」を筆頭に「おもしろい女」「桜月記」などで活躍した女優が自ら半生をつづった一冊が本書である。

第一章「あいつより 上手いはずだが なぜ売れぬ」
この川柳は私自身、落語の世界でよく言われたことを聴いたことがある。しかしこの川柳そのものは落語の世界だけではなく、エンターテイナーの世界についているものであればどこでも使われる川柳なのかもしれない。
役者の世界でも例外ではない。15歳で役者デビューを飾るも、主役の座を得たのは現在でもロングランを続けている舞台「放浪記」に抜擢されるまで26年間なかった。
その放浪記の醍醐味のエピソードと思い出も含めて、本章では初めて主役を得た「放浪記」を綴っている。

第二章「京都に生まれて・・・・・・」
著者は1920年に京都で生まれた。「大正ロマン」真っ只中と呼ばれた時代の雰囲気と文化を小さい頃から触れ続けてきた。14歳と現代で言う中学生の頃に女優デビューしたが、程なくして大東亜戦争となり、「慰問団」として戦争地へ慰問に赴く毎日だった。終戦を迎えた後、米軍キャンプで謳ったり、京都に戻って下積み生活を送ったりと数多くの「苦労」を重ねてきた。

第三章「人生の「放浪記」」
著者にとって「放浪記」は著者の人生そのものとも言える。その著者が主役として放浪記に出演し始めたのが、昭和36年。ちょうど50年前のことである。それ以来2千回にも3千回にも及ぶほどの公演を重ねてきた。

第四章「テレビではお母さん女優」
著者は舞台だけで活躍したわけではない、TVドラマでも「お母さん役」を中心に『時間ですよ』などのドラマに多数出演した。そして著者自身が90歳でも第一線で活躍できる健康法、そして100歳に向けての豊富を述べている。

日本を代表する大女優として現在も第一線で輝き続けている森光子。彼女の姿は俳優界のみならず、日本人が忘れかけていたものを、本書を通じて自らの背中で教えてくれるような気がした。