日本人と武具の歴史は、広義で言えば旧石器時代のころからあるのだが、際だって日本として「武具」を有名にしたのは武士が誕生した平安時代後期にまで遡る。ちょうど時代としては「中世」という立ち位置にあるのだが、その時代から武具はどのように進化を遂げ、どのように使われてきたのだろうか。本書は日本史の中から「武具」にスポットを当てて考察を行っている。
第一章「日本の戦士たちはどんな武具で闘ったのか」
日本の武具は中世・近世のものがとりわけ有名であり、海外からの評価も高い。現に海外の美術展に出展したこともあり、コレクターもいるほどである。
本章の話に移るが、ここでは概要として刀剣や鉄砲、さらには甲(よろい)・冑(かぶと)の変遷の大まかな所について論じている。
第二章「中世の防御具」
「中世」というとかなり広くとらえられる、時代で言うと「平安時代後期」から「安土・桃山時代」というところか。その中の武具は数多く生まれており、有名になったものも多い。
その時代の武具を大きく分けて「防御」「攻撃」にして、本章と次章にて紹介している。
「防御」というと「甲冑」が多くを占めるが、身を守るために用いたが、数百年の時を経て「美術品」として今も生き続けている。
単純に「甲冑」とは言っても部位は多岐にわたっており、それぞれ役割が異なっている。本章では部位を一つ一つ分かりやすく解説しているだけに、甲冑の奥深さを知ることができる。
第三章「中世の攻撃具」
武器とは言っても「刀剣」や「鉄砲」ばかりではない。弓矢や馬も立派な「武器」である。本章では「弓矢」「刀剣」そして「馬」の武器についての解説を行っている。
「弓矢」にしても状況によって合うものが異なるのが最も印象的であった。
第四章「律令制下の武具」
「律令」といえば、言うまでもなく710年の「大宝律令」のことを言っているが、ちょうどその時代は「奈良時代」である。そのときの武器や防具は武士が誕生した時代とは異なっており、その詳細もあまり知られていない。本章ではその時代の武具について「国家珍宝帳」と正倉院遺品と数少ない文献や史料をもとに解き明かしている。
第五章「近世の武具」
安土・桃山時代後半から江戸時代にかけての武具を紹介している。ここでは伝来し始めた鉄砲や火器も紹介されているが、本章で印象的だったのが甲冑の進化のパターンが分かれており、それぞれ特徴が異なる。
「武具」は武士にとってなくてはならないものであるが、その進化についてこれほどまで深く掘り下げられた一冊は存在しない。それゆえ武士の時代について深く知りたい人にとっては欠かせない、かつ日本史でも道具の歴史を知りたい人にとってもお勧めできる一冊と言っても良い。
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