震災は人も物も夢も希望も生きる力もすべてを飲み込んだ。
本もまた例外ではなく、地震・津波により多くの本屋が失われてしまった。それから店をたたむところもあれば、プレハブやテントで仮店舗として再会するところもあった。震災から時は過ぎ、復興の足跡が響いてくる中、本来ある「書店」も復興し始めた。
本書は被災地の書店の復興までのプロセスを描いている。
一章「本は「生活必需品」だった」
なにもかも飲み込んだ震災。その中で多くの本が失われた。その中で「本」は必要なのか、という疑問が浮かび上がった。
かつて「あって当たり前」だったもの、ありふれたものが失われたとき、どれだけ貴重な物なのか必要だった物なのか思い知らされる。
二章「福島に灯りをともす」
福島の書店の中には被災した。これは他の被災地も例外ではなかった。福島では本屋を通じて「灯り」をともす勇気を与え、本屋を始めたり、続けたりする人も出てきた。
三章「移動書店の人々」
災害により店舗を失ってしまった本屋も存在しており、その中でもクルマなど移動手段をつかって移動しながら、青空のもとで本や雑誌を販売する、いわゆる「移動書店」と呼ばれるものも存在した。
四章「ジュンク堂の「阪神」と「東北」」
大型書店として有名な「ジュンク堂書店」。故郷の旭川にもあるため親近感がある。
そのジュンク堂書店は「阪神・淡路大震災」の教訓を活かし、本を通じて被災者たちの心を温め、そして活力をつけた。
五章「飯舘村に「本のある風景」を」
福島県飯舘村は自身の被害のみならず放射能の被害も深刻であり、ほとんどの村民は避難をした。本屋を務めた人も避難せざるを得ず、現在も避難先で飯舘村に「本のある風景」を思い浮かべているのだという。
六章「復興の書店」
被災地の至る所で復興の足がかりとして「書店」をつくり、情報の発信地としている。先行きが不安定の中で「心の寄り処」としての書店がここにある。
今でこそ一歩一歩であるが、復興に向けて進んでいる。その中でも本書は「本屋」をフォーカスしたわけであるが、もしも私たちの周りに本屋や図書館がなくなったらどうなるのか、と言うことを考えさせられた印象が強かった。その上で本があること、こうやって書評ができることの喜びをかみしめることができる。本書はそんな気分にさせてくれる一冊である。
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