進化

あさ出版 吉田様より献本御礼。
かつて野球界で鉄人と呼ばれていた人は何人か存在する。衣笠祥雄(広島)金本知憲(広島→阪神)がその例である。現役歴は20年そこそこだったが、連続試合出場、もしくは連続フルイニング出場という意味合いから取り上げられている。

「鉄人」とは呼ばれていなくとも、本書の著者である中日の山本昌と山崎武司はともに「現役最年長」の記録を更新し続けている。とりわけ山本昌は1983年の入団から約30年にもわたって現役を続けており、現役・引退・架空の人物全て含めて現役歴の長い選手は「あぶさん」こと景浦安武くらいであろう。

約30年もの現役生活を続ける秘訣、自分自身の役割、そして「引き際」について両者の考えを示し、「継続力」そのものを体現したものが本書である。

第1章「「心」を強くする~折れない心を保ち続ける」
武道における要素として「心技体」がある。プロ野球でもそれに通ずるものがあるとして、第1章~第3章まではその「心技体」一つ一つを紹介している。
最初は「心」、いわゆる「心構え」である。
練習に取り組む姿勢、失敗を活かす方法、結果を出し続けることなどについてそれぞれの意見を主張している。

第2章「「技」に磨きをかける~体の衰えをカバーする頭と経験」
両者は技術を「維持する」、もしくは「磨く」、場合によっては「変える」こともある。
本章では長年重ね続けていた「技術」についての考えを示している。
第3章「進化する「体」~ベテランと呼ばれてなおの伸びシロ」
入団してから数年は体力をつけることができる。しかしそれ以降は年を重ねていく度に体力は衰え続ける。その「衰え」と戦いながら「伸びシロ」を見つけ、伸ばしている。その「衰え」の中には「怪我」が存在しており、その怪我との戦いもまた「自分との戦い」の一つとしてある。

第4章「「充」モチベーションを保ち続ける」
モチベーションを長年維持し続けることは非常に難しいことである。
著者のご両人はチームメートや監督、さらには趣味や験担ぎなどによって維持したり、向上したりしている。本章ではモチベーション管理についての考えを明らかにしている。

第5章「「和」組織との付き合い方、役割の変化」
野球は1人ではできない。最低でも9人は必要である。さらに言うと監督やコーチ、さらにはベンチ要因からファームなど挙げてみるときりがないほどの人数によって支えられている。
その「支え」が組織であり、求められる「和」の力となる。本章ではベテランの領域においての「和」の重要性についてそれぞれの立場から説いている。

第6章「「退」どんな引き際を迎えるのがいいか」
著者のご両人は既に「引退」という二文字が見え隠れする時期に入っている。その「引退」という二文字を意識するとき、いつまで続けるのか、どのようなやめ方が良いのか、そして今どうあるべきか、それぞれの考え方は異なるが、本章ではその「異なる」考え方について展開している。

長年にわたりプロ野球界に携わり、そして今もなお活躍し続けている。現状維持ではなく、体力の衰えや若手の台頭と戦いながら今もなお「進化」を続けている。進化を続け、「現役最年長」という状況になっても満足せず、それでも引き際を考え、悩み続けている二人の群像を本書では映し出している。

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