ネット評判社会

「評判」と言うと、けっこう「口コミ」と呼ばれる事がある。かつては雑誌や噂話、さらにはTVなどが中心となっていたのだが、最近ではインターネットのサイトやブログ、さらには掲示板と言った所から噂が広がり、人気を得たり、逆に人気がなくなったりしている。こう考えてみると「評判」が起こる場所が異なっているだけの様にも見えるのだが、実際の所それだけではないと言える。

本書はネット評判の歴史と研究を通じたメカニズムとこれからの社会について取り上げている。

第1章「安心社会と信頼社会」
本章のタイトルでは日本とアメリカにおける社会の違いを表している。前者は日本、後者はアメリカを指しており、日本では集団的で他人と寄り添うことを尊ぶこと、さらには安定した暮らしを得ることによって精神的な落ち着きを求める事から「安心社会」と定義されている。それに対しアメリカでは、相手の信頼を重んじる社会であるという。しかし日本でもアメリカの文化や考え方ら流入されてきており、次第に「信頼社会」へとシフトしつつある。もちろんこの「信頼」や「安心」というのは傾向に合えば合うほど評判につながっていく。

第2章「歴史からの教訓」
評判における歴史はいったいどのようなものなのだろうか。本章では「マグリブ商人」を始め、株仲間と言ったモノを中心に取り上げている。

第3章「実験研究からの教訓」
本章における実験は「ネットオークション」の場で行われている。実験として色々な商品をオークションにかけて売り手とコストの変化、さらには売り手の年代など様々な変化を付けて、「匿名」や「評判」「実名(本章では「顕名」としている)」とでカテゴライズを行い、市場の変化における考察を行っている。

第4章「評価と評判」
実験を通じて「評判」とは何かについての定義を取り上げている。「評判」の国語辞典としての意味愛から評価者、さらには基準と言った所にまで言及している。

第5章「開かれた安心社会に向けて?」
インターネットの上では様々な情報が流れるのだが、その中で「安心」「安全」を求めるのは日本人の性である。そのためインターネットの世界でも「安心」「安全」を求める声が強くセキュリティや評判と言った所にも影響を及ぼしている。

最初に何度か「口コミ」と書いては難であるが、本書は「口コミ」の歴史ではない。むしろ評判がどのような歴史を歩み、インターネットの世界で生き、社会に貢献しているかと言うことについて考察を行っている一冊である。そう考えていくと、評判はいったいどのようなものなのか、そしてそれがネットの世界でどう変化していくのか、と言うのを知る事ができる一冊であり、どうしたら口コミを広げられるのかという一冊ではない。そのことだけは付け加えておく。