四コマ漫画―北斎から「萌え」まで

四コマ漫画は今となっては数え切れないほど存在しており、新聞・雑誌など私たちの生活に欠かせないメディアにも必ずと言ってもいいほど入っている。四コマ漫画はそれだけ浸透しているのだが、そもそも四コマ漫画はいかにしてできたのか、そしてどのような歴史をたどっていったのかは私にもわからなかった。

そこで本書である。本書のサブタイトルに「北斎から~」と書かれており、一瞬目を疑ってしまうのだが、本当に葛飾北斎のころからあったのか、四コマ漫画の歴史について紐解いている。

1.「四コマ漫画の誕生―江戸時代」
漫画の起源は今もなお議論の中にあるのだが、有名な説として「鳥獣戯画(鳥獣人物戯画)」と呼ばれる平安時代の絵巻から始まった説がある。それから数百年過ぎ江戸時代に入ってから漫画の進化はどうなっているのかというと、実をいうと大衆漫画が出てき始めたと言われている。特に有名なものとして葛飾北斎の「北斎漫画」というのがあり、全12編も存在していた。この時からもうすでに「諷刺画」や「コマ」の概念は出来上がっていた。しかし当時はコマはあったとはいえ「四コマ」と決まったわけではなく、作品によって二コマだけのものから十コマ超えているものもあった。

2.「西洋四コマの到来―明治時代」
現在のような「四コマ」が出来上がったのは西欧の文化が数多く入ってきた明治時代に入ってからのことである。本書では「西洋四コマ」として扱われている。漫画のヴァリエーションは多岐にあるのだが、時事的なものが多かった。それがのちに新聞連載として扱われるようになっていった起因として挙げられる。

3.「新聞連載四コマの登場―大正時代」
大正ロマンあふれる大正時代に現代漫画の原型ができた。それは「正チャンの冒険」というものである。ほかにも「新聞連載四コマ」なるものも次々と誕生した。それに伴い次々と漫画家が誕生した。

4.「第一次「新聞四コマ漫画」ブーム―昭和戦前」
大正から昭和初期にかけても四コマ漫画が特に新聞にて爆発的に広がりを見せた。このころ人気があったのは田河水泡「のらくろ」シリーズや横山隆一「フクちゃん」が挙げられる。四コマ漫画とひとえに言っても、プロレタリアや軍隊ものなど思想的にも幅が見られるようになった。

5.「第二次「新聞四コマ漫画」ブーム―昭和20年代」
戦後になってからも四コマ漫画は新聞を中心にブームとなったのだが、戦前とは違い家族ものなどが出てくるようになった。現在でもテレビアニメとして親しまれている「サザエさん」が生まれたのもこのころである。

6.「サラリーマンが主役―昭和30・40年代」
時代は高度経済成長となり、漫画もギャグマンガからサラリーマンが登場する漫画までできていった。現在四コマ漫画の中で最長寿を誇る「ぼのぼの君」が生まれたのもこの時である。

7.「「雑誌四コマ」の時代―昭和50・60年代」
これまで四コマ漫画は新聞中心であったのだが、そこから雑誌に発展し始めたのが昭和50年代に入ってのことである。このころには漫画は一大文化となり、億万長者になった漫画家も出てくるようになった。漫画業界も次第に一大産業となり、メディアとしても看過できない存在となった。その一方でかつてあった「漫画は子供だけのもの」という概念が消えていったという。

8.「不条理四コマ・萌え四コマ―平成から21世紀へ」
平成になってから社会風刺やギャグ、さらには日常的な漫画など次々と生まれ、さらには四コマ漫画専門誌なるものも誕生した。さらに女の子の可愛さを重視した、いわゆる「萌え」と呼ばれるジャンルもでき、それに関する四コマ漫画もできるようになっていった。

「四コマ漫画」とともに漫画の歴史を紐解いてみると、江戸時代から遡れるという。もともと漫画の概念は最初にも書いた通り「鳥獣戯画」のころからできていることを考えると歴史は長いといえる。しかしその中で「四コマ漫画」だけにスポットを浴びたら限定的になるのではないかと私は考えたが、本書でもってものの見事に覆された。局所的のように見えて、実は歴史は深く、それでいて時代背景が色濃く映る、それが四コマ漫画の歴史の醍醐味と言えよう。