あなたのプレゼンに「まくら」はあるか? 落語に学ぶ仕事のヒント

けっして「まくら」だからって寝具ではなく、落語における演目に入るまでの雑談である。噺家の中には人間国宝となった十代目柳家小三治のようにまくらを使いながら演目をきめる方もいれば、昨年逝去した三代目桂春団治のようにまくらに入らずいきなり演目に入る方もいる。

しかしながら小三治のようにまくらを売りにし、お客も楽しみにするようなことが多く、単なる雑談と言うよりも一種の「漫談」として成り立つこともままある。著者はその「まくら」こそビジネスを行っていくには良いツールになるという。その理由と方法について噺家ならではの観点から説いている。

一章「イェール、三井物産、立川流」
著者はいわゆるエリートコースと呼ばれている道から立川流に入った異色の存在である。本章のタイトルにあるように元々は大企業のサラリーマン、アメリカの一流大学に入り、安定した人生を送ることができたのだが、そもそも噺家の道を選んだのかそのことを取り上げている。しかも弟も噺家ではないもののエリートコースから役者の道を歩んでいる。

二章「落語に仕事を学ぶ」
著者は立川志の輔門下に入り、前座修業が始まった。その修業の中で仕事になるヒント、さらには落語とは何かなどを学ぶきっかけとなったが、その中でも仕事に役立つ要素とは何か、そのことを取り上げている。

三章「まくらに学ぶ雑談」
「まくら」は雑談と書いたのだが、そもそもなぜ「まくら」をするのかと言うと演目が決められないときにお客の反応をまくらで見て、演目を決めるというのである。もっともその「まくら」はものの数分で終わることもあれば、20分以上かけてまくらを行うこともある。その「まくら」はビジネスにおいてどのようにして役立つのか、そのメカニズムを取り上げている。

四章「リズム、間、調子を獲得せよ」
もっとも落語は単純に言葉を発するだけでは人に感動を覚えることができない、息遣い・リズム・間など様々な要素を取り入れていくことによってはじめてお客の心をグッとつかむことができるようになる。その技術を伸ばし方によって、大成せずに終わるか、名人になるかがわかってくる。

五章「最強の趣味、落語への誘い」
落語は今となってはどこに行っても聞くことができる。生で聞くところと言うと寄席もあれば、最近ではホールで落語会をやるところもドンドン増えてきており、より身近な存在になりつつある。

落語は人生において重要な要素を教えてくれるだけでなく、仕事におけるヒントも与えてくれる。最もしゃべり方にしても落語がヒントになることがある。私自身も落語鑑賞を趣味としているのだが、その趣味はどのように活きていくのかそれを見出すきっかけの一冊と言える。