和漢診療学――あたらしい漢方

漢方は種類の数だけ効能があり、一つの漢方、あるいは漢方の組み合わせによって処方される。東洋医学の中で漢方は代表的な治療であったり、処方であったりする。一方で西洋医学も医療技術の進歩によってこれまで難病と呼ばれた病気が治療できるようになっていった。その漢方を基軸にして、西洋医学とを持ち合わせたのが本書で紹介される「和漢医療学」である。本書は新しい漢方の在り方について説いている。

第一章「診療室の一日」
著者は医大大学院を修了してからずっと和漢診療を続けていった。その和漢治療について実際に診療を行ったケースについて綴っている。どのような病気なのかというと「頭痛」や「冷え性」といった、漢方でもよく処方されるものから、「ふくろう症候群」や「シェーグレン症候群」といったあまり聞きなれない病気の処方についても綴っている。

第二章「和漢診療学とは何か」
第一章にも書いたのだが著者が「和漢医療」に携わったのは医大大学院を修了してからのことである。その時に著者が赴任した病院に「和漢医療室」が新設され、著者が赴任したという。その後ずっと「和漢医療」や漢方の治療に携わり、研究していったのだが、その研究の中で著者が新しい医療の在り方について3つを示している。

第三章「漢方医学の病態のとらえかた」
「和漢医療」の基軸には「漢方」があることは冒頭にて述べたのだが、その漢方医学はどのようにして病状をとらえ、処方するのかについて本章と次章にわたって取り上げている。本章ではどのようにして「病態」をとらえるのかを取り上げているのだが、「気」や「陰陽」などを用いているという。

第四章「漢方医学の新療法」
本章では処方も取り上げているが、病態を取り上げるための具体的な診察にも言及している。とはいえ第三章では概要的な部分を取り上げているのに対し、本章では具体的な方法にフォーカスを当てている。

第五章「漢方薬の成り立ちと特徴」
漢方には色々な生薬があり、それぞれに異なる効能がある。もちろん処方方法も生薬によって異なるのだが、効能・処方においてどのような特徴があるのか、本章にて取り上げている。

第六章「日本における漢方の歴史」
日本における漢方の歴史は中国大陸との交易の歴史にほど近いという。またその漢方が生まれた中国大陸では2000年以上の歴史に及ぶのだという。

第七章「科学と漢方」
漢方と科学は相容れられないように見えるのだが、本章では科学と漢方の関連性について体系的に取り上げている。もちろん「科学」を根本的に解き明かしているのだが、ほかにも臨床の現場においてどのように証明されていったのかについても本章にて取り上げている。

「和漢医療」は本書に出会うまで知らなかったのだが、西洋と東洋の医学の「いいとこ取り」といえばわかりやすいかもしれない。西洋医学でも医療技術の進歩が著しいのだが、それでもなお東洋医学にかなわないところは少なからずある。そう考えてみると両方に可能性のある分野がいかに相乗効果を働かせるのかその可能性を見出してくれるのが「和漢医療」といえるのではないだろうか。