ニュースの裏を読む技術

新聞や雑誌、テレビ、さらにはインターネットを通じて毎日たくさんのニュースが流れる。中には深掘りするような内容もあるのだが、そのニュースをそのまま受け取ってしまっては、情報に踊らされてしまう、いわゆる「情弱」と呼ばれてもおかしくない。そのような人にならないために、得た情報を取捨選択する、疑うと言ったことも必要であるのだが、ほかにも本書で取り上げる「裏を読む」ことも必要なことである。本書はどのようにしてニュースの裏を読めばよいのか、そのことについて伝授している。

第1章「「草食男子」流行に観る「もっともらしいニュース」ができるまで」
「草食系男子」の元となった「草食男子」は2006年、著者が日経ビジネスオンライン上のコラム(のちに単行本・文庫化)にて取り上げたのだが、その時は「関係のフラット化」などのようなポジティブな意味合いで取り上げられていた。しかしそれが雑誌やテレビなどのメディアの誤読によって、ネガティブな意味に変えられ、後にそれを引き起こしたことにより、当のコラムニストは詫びたという。それに関連する本でも取り上げたのだが、著者が悪いわけではなく、むしろそれを誤読し、拡散したメディアが責任を負うべきなのだが、誰一人して負わない、しかも責任はおろか、それを勲章のごとく流布するような言動さえあるほどである。本章ではその「草食男子」を生み出した本人が成り立ちからなぜ誤読されたのか、そもそも「草食男子」の本当の意味とは何かの裏を読んでいる。

第2章「「イマドキの若者は○○○」説を疑う」
古くはソクラテスの時代から言われていた本章のタイトルの説、いわゆる「俗流若者論」と言われているのだが、最近では「若者の○○離れ」と言うような言説で言われている。本章の亜種と言えば亜種なのだが、なぜそういった言説が行われるようになったのか、「恋愛」「海外旅行」「留学」などを基軸に取り上げている。

第3章「騒がれる「少子晩婚化」の意外なデータ」
少子晩婚化は最近顕著になった話ではなく、戦後間もないころから緩やかになってしまい、バブル崩壊になってからそれに拍車がかかり、今に至るような話である。確かに少子晩婚化は進んでいるものの、結婚観の変化はむしろ結婚したいというような人は少なくない。しかし「結婚」をゴールと言うよりも、スタートとして考え、これからの結婚生活に向けて収入を増やし、幸せな結婚生活を送ることができるか、その面での不安があり、結婚に踏み切れないというような形になってしまっている。本章ではそれに限らず、結婚観、そして結婚後の子どものことに至るまで様々なデータをもとに考察を行っている。

第4章「あの社会問題の表と裏」
「あの社会問題」と言っても「アラブの春」「生活保護」「殺人事件」「無縁死」など様々な社会問題についてデータや報道の裏を見ながら、その本質について迫っている。

第5章「「日本は終わっている」のか」
「少年犯罪が増えている」「いじめは日本特有のもの」と言うような話を聞くのだが、それはいずれも嘘話である。少年犯罪は戦前の頃から存在していることはデータベースや本でも取り上げられているほど有名であり、その中には現代ではゾッとするような猟奇的な事件もあった。また「いじめ」は「itと呼ばれた子 青春期」をはじめ多くのノンフィクションでも取り上げられているようにどの国にも存在している。ほかにも少子高齢化にともなう人口減も日本に限らず、お隣の中国でも起こっており、その度合いは日本よりもひどいのだという。「日本は終わっている」というありとあらゆる要因について、国・時代など様々な要素から比較をしてみると、明るい要素や日本はまだ捨てたものじゃないようなところもある。

メディアは様々な側面を見せる。メディアが読み解いている通りの解釈を続けていると、思考停止に陥り、メディアの操り人形にされてしまう。それを避けるため、自ら律し、考えていくためには裏を読む必要もある。本書はその一部分であるのだが、それでも裏を読む例題としては十分と言える一冊である。