認知症に関しての考え方は刻々と変わっていく。もっとも認知症はどのような嗜好を持っているのか、実際に認知症の患者を治療している医者の方々の話もあれば、認知症を研究しているのだが、実際に本当に認知症にかかってしまった時の心境を綴る本、さらには認知症でありながらも楽しく働いている店の姿など、ありとあらゆる視点の変化がある。
そこで本書である。認知症はどのような苦しみがあり、コミュニケーションがあり、見ている世界とはどのような物なのか、そのことについて取り上げている。
第1章「認知症の人との「会話」を取り戻す」
認知症患者の方々との会話となると、会話のやりとりが難しくなると行ったこともあれば、会話そのものが成立しないといったリスクも見え隠れする。その認知症の方々を会話を知る要素として、本症では「CANDy(キャンディ)」と呼ばれる著者らのグループが創った認知機能の評価法である。その評価を用いて、どのような会話能力を持っており、どう取り戻していくのかを取り上げている。
第2章「認知症の人のコミュニケーションの特徴を知る」
認知症はどのようなコミュニケーションにおける特徴を持っているのかであるが、よくいる若者や高齢者との違いとはどこにあるのかの比較も行っている。コミュニケーションと言っても対人における言語を利用した会話もあれば、表情や雰囲気などを読み取る「非言語コミュニケーション」でもまた認知症の方々とそうでない人との違いが出ている。
第3章「認知症の人が見ている世界を知る」
認知症となると会話能力ばかりでなく、記憶力や注意力が衰える傾向にある。またモノ・コトの認知をするための「認知機能」もまた低下する傾向にあるという。しかしながら「認知症」とひとえに行っても、アルツハイマーを含めた種類が多く存在しており、また認知症の傾向も異なっている。それぞれの認知症の傾向も併せて本章にて取り上げている。
第4章「認知症の人の苦しみを知る」
認知症であることを自分自身で認知できる人も少なくないのだが、それでもなお周囲から知らされて初めて気づく方、あるいは周囲は認知症だと判明できたとしても認められないケースも存在している。それぞれの「認知症」に対する苦しみはあるのだが、どのような苦しみがあるのかを取り上げている。
第5章「共によりよく暮らす方法を知る」
認知症の方々との関わりは非常に難しい。特に介護を行っていくうえで、虐待になる・ならないという基準も難しく、介護をする方々も四苦八苦している。また認知症にまつわる認知も変わってはきているものの、未だに偏見が存在している現状も取り上げている。
認知症になった方、あるいは認知症にかかっている方を持つ家族はどのような状況で接しているのか、あるいは行動をしているのか、それに触れることは難しいかもしれない。しかし、研究者の立場として認知症はどのような状況なのか、そしてどのように触れていったら良いのか、その参考資料となる一冊と言える。
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