倒産法入門―再生への扉

新型コロナウイルスの感染拡大により倒産が相次いでいる、と言うニュースが流れるのだが、実際の統計では2020年度(2020年4月~2021年3月)では7809件で2000年以降では「最少」だった(「帝国データバンク」より)。コロナ関連の倒産もあったのだが、補助金などの緊急支援策を続々と出し、適用したことにより、倒産が抑えられたのも要因としてある。

ただ、「倒産」となると、勝手に会社を清算して良いかと言うと、決してそうではない。倒産をするにしても手順があり、なおかつ倒産寸前の状態から再生や更生を行うといった法律「群」である。倒産法はあくまで総称であり「破産法」「会社更生法」「民事再生法」など色々な法律が存在する。では倒産法はなぜつくられ、どのように適用されるのかを取り上げている。

第1章「倒産とは?」

「倒産」と言っても、表現のヴァリエーションは異なり、なおかつ法律の適用方法によって様々である。破産をして廃業するか、財政的に破綻が起き継続不可能になるか、民事再生法適用や会社更生法適用となるか、などが挙げられる。

ただ単純に、辞書を調べてみると、

1.財産を使いつくすこと。特に、企業が不渡手形などを出して銀行取引の停止処分を受け、事業を継続できなくなること。
2.逆産。さかご。「広辞苑第七版」より

とある。当然1.の意味である。

第2章「総財産と総債権の清算? ――破産」

破産となると、個人としても「破産宣告」が破産法としてある。しかしながら破産をしたからと言って全てが清算されるわけではない。できるところとできないところがあり、いかにして破産の手続きが行われるのかを取り上げている。

第3章「誰もが利用できる民事再生」

「民事再生法」は経済的に困窮した方々が、再生するためにつくられた法律で1999年に公布された法律で、企業の倒産でもよく適用され、そごうなどの大企業でも使われたことがある。本章では民事再生法の申請から適用に至るまでの流れを取り上げている。

第4章「最強であるがゆえに ――会社更生」

会社の再建や破産についての法律は民事再生法だけでなく「会社更生法」にもある。民事再生法と比べるといくつか違いがあり、ひとつは「競売」である。民事再生法は債権者が会社を競売を申し立てることができるが、会社更生法ではそれができない。また逆に経営陣は民事再生法はそのままにできるが、会社更生法は全員交代が原則である。他にも細々とした所はたくさんある。

第5章「協定にもとづく株式会社のDIP型清算 ――特別清算」

倒産の中には「破産」もあれば、本章のような「特別清算」もある。その中でも「特別清算」はどのようなものなのか、「破産」とはどのような差があるのか、そのことについて取り上げている。

第6章「手続開始によって変わる風景一 ――法的整理は誰の利益を実現するか」

前章までは倒産や破産に関して種類、あるいは定義などを取り上げてきたのだが、本章では実際に破産や倒産などの「手続き」を行う事によって、どう変わっていくのか、を本章と次章とに分けて紹介している。倒産に関しての「法的整理」はいかにして行われ、なおかつ債権者・債務者双方はどのような恩恵などを受けるのかを紹介しているのは本章である。

第7章「手続開始によって変わる風景二 ――契約関係の変容」

前章は恩恵の部分だが、本章は主に「契約」についての部分に入ってくる。債権・債務の契約も変わってくることは確かだが、本章ではその「変化」について取り上げている。

第8章「管財人の強腕(strong arm) ――否認権の行使」

倒産や破産、清算は法律の適用によって変わってくるのだが、その中でも「管財人」が必要かどうかも分かれてくる。特に管財人をつけなければならないところとしては会社更生法がある。

特に管財人としての権限は強くあり、否認権と呼ばれる独自の権利も所有している。

第9章「優先的地位の処遇 ――担保権と法的整理」

倒産や破産を行っても弁済が免れるわけではない。どのように弁済を進めていくか、その中には担保や法的整理と言ったものが絡んでくる。本章ではその2つの要素がいかにして作用されるのかを取り上げている。

第10章「互いに同種の債権を持ち合う二人の関係――相殺に対する法的整理の規律」

同じ債権を2人や複数人が持つと言った事もある。しかしその債権の授受を行うにしても、複数が絡むとなると複雑になってしまうように思えるが、実は「法的整理」の決まりとしてそこの部分も「相殺」によってうまく成り立っている。

会社を経営している方々であるとどうしても頭をよぎる一方で、会社を経営していない人では縁遠い部分もある。しかし会社は大小問わず、いつ倒産するのかわからないのが現状である。倒産法は冒頭でも述べたように様々な法律によって成り立っているため、何を適用したら良いのか分からない方々もいる。専門家に頼むことも必要だが、専門家に依存せず、自らも少し頭の片隅に入れておくことにより、ある程度の予防線を張ることができる。