空洞電車

夢に向かって、戦場に向かって乗る電車。しかし、ある出来事によって、悲喜こもごもと入り交じった感情がいつしか空っぽになってしまった。本書はとあるバンドがメジャーデビューを果たそうとした矢先、リーダー的存在だったギター兼ボーカルが突然の死を遂げた。

その死に他のメンバーが、マネージャーがどのように受け入れようとしたのか、各メンバーごとの思いが交錯して物語として成り立っている。

しかし他人から色々な観点で見られていたのだが、亡くなった当人の主観では「自分は空洞な人間」だったという。空洞であるが故に、偏屈になり、ワガママになり、そして天才になった。それも全て「空洞」であったことが要因かどうかはわからない。

人は誰しも「空洞」があるのだが、その空洞の「捉え方」によって考え方、生き方が変わってくる。そのことを思い知らされる一冊であった。