越えていく人——南米、日系の若者たちをたずねて

本書は著者自身がペルーに住みながら、ペルーを含めた南米諸国を渡り、日系人たちとの出会いを通して、越境していくこと、日系人とはなにかを見出している。そもそも「日系人」とは、

日本以外の国に移住し当該国の国籍または永住権を取得した日本人、およびその子孫のこと。Wikipediaより抜粋

とある。日系人として印象が強くあるのが戦後になってからJICA(国際協力機構)の支援により、南米に移住する方々が出てきたことにあり、本書で取り上げる方々もそれに関しての移住者、もしくは二世・三世の方々もいる。

1.「Perú ペルー」

著者の祖父が元々沖縄からペルーに移住したことが縁となり、日系人三世である。しかし生後半年で日本に渡り、その後は日本で育った経緯がある。その祖父の足跡を訪ねてペルーへと渡った。

2.「Argentina アルゼンチン」

ペルーで祖父の足跡を調べて行くと、「日系人とは?」という問いが浮かび上がってきた。その日系人とは何かを追って次にアルゼンチンへと渡っていった。その国で暮らす日系人たちはどのような経緯で移り住み、なおかつ定住していったのかを取り上げている。

3.「Paraguay パラグアイ」

次はパラグアイである。もちろん地域によって日系人が数多く住んでいる地域もあり、そこで定住している中には二世・三世といった方々もいる。中には著者と同じ世代か、もう少し若い世代もおり、その中でも若い世代はその国に定住してどう感じているのかをインタビューなどで挙げている。

4.「Brasil ブラジル」

2016年にリオデジャネイロにて夏季オリンピックが開催されたブラジル。そのブラジルの地で日系三世の家族がいた。その家族との関わりを取り上げているが、実は本章で取り上げている家族は前章のパラグアイで取材した家族とも関わりを持っている。

5.「Bolivia ボリビア」

ボリビアの首都であるラパスは世界でもっとも標高の高い首都として有名である。場所によるのだが、2900~3600mほどの標高に位置している。しかし地域によっては標高数百mほどの低地も存在している(「低地ユンガス」がそこにあたる)。そのボリビアでは日本からの移住の歴史を深く聞くことになり、なおかつ日本とボリビアとの縁を深く体験するようになった。

「日系人」の歴史自体は長く、一説には戦国時代末期にはフィリピンにて在フィリピン日本人がいたという経緯がある。第1章のペルーや第5章のボリビアでは大正時代のころから、第3章のブラジルへは明治時代から移住が始まっていた。そこから歴史が始まり、100年ほど経った今、どのような状況だったのかを知ることのできる格好の一冊であった。