夜空に泳ぐチョコレートグラミー

本書は短編集であるが、人間としての生と死、さらには青春にいたるまでのジャンルが網羅されている。子どもの無邪気なエピソードかと思いきや重い話になってしまうこともあれば、いきなり「恋人の死」に直面するようなエピソードに至るまで、本当の意味で「網羅」されているようである。

短編集でありながらも先述の理由から読み応えがあり、自分自身の生と死を考えさせられる一冊に仕上がっている。不思議な感覚の一冊であるが、その「不思議さ」こそが、著者の魅力であり、ドンドンと物語が進んでいくようにできているのも醍醐味としてある。その魅力について好き嫌いはあるかもしれないが、どうであれ、引き込ませるように作られることもまた小説の面白味としてある。本書はその側面を十分に見せられる一冊と言える。