嘘かまことか

今ではそれ程精力的に作品は出していないのだが、著者はかつて「御宿かわせみ」「西遊記」をはじめ多くの小説を世に送り出した。またそれだけで無く「ありがとう」「肝っ玉かあさん」「女と味噌汁」などテレビドラマの脚本を手がけるなどの活躍を見せた。落語ファンであれば、林家彦六(八代目林家正蔵)が演じた新作落語「笠と赤い風車」も手がけた。

その著者は昨年「卒寿」を迎えた。本書の表紙を見てみると「矍鑠(かくしゃく・年を取っても丈夫で元気なさま)」であることがよくわかる。

その著者のエッセイであるが、長きにわたる作家人生、そして平岩弓枝としての人生を一つ一つ振り返っている。特に1959年に受賞した直木賞受賞のあらましなど、事細かに綴られており、家族はもちろん、精力的に活動した時代から令和の現在の至るまでの思い出がギッシリと詰まっている。200ページほどであるのだが、それに収まりきらないほど濃密なエッセイであり、ご存命の間にもう1~2冊出してほしいほどだった。