今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢

ハンナ・アレントはドイツ帝国にて生まれたユダヤ人であり、ナチズムが台頭してからアメリカに亡命し、自身の哲学を発展させた。有名な著作に「全体主義の起源」がある。1951年に発表された。

本書はその「全体主義の起源」をもとにハンナ・アレントにおける「全体主義」の悪夢を解き明かしている。

第1章「反ユダヤ主義の起源」

そもそも「全体主義の起源」が生まれたきっかけとしてナチズムの台頭にあった。自身がユダヤ人であること、またナチズムによるユダヤ人迫害が横行していたことにあった。

冒頭でアメリカに亡命したと書いたのだが、このドイツとアメリカの間に、一度フランスにも亡命していた。ドイツからフランス、そしてアメリカへと渡り歩いた形になる。その背景もまた「ナチズム」である。ドイツにおいてナチズムが台頭してからフランスへと亡命し、そのフランスにおいてナチスドイツの侵攻があり、そこから退避するようにアメリカに亡命した経緯がある。

本章では「全体主義の起源」の第1部にある「反ユダヤ主義」の起源を明らかにしているが、先述の経緯も入っていると言っても過言ではない。

第2章「「大衆」の登場」

この時代にはナチズムの他にイタリアの「ファシズム」もあった。ファシズムは軍事クーデターにより、実権を握った経緯があるのだが、ナチズムはそれとは異なる。はじめこそはファシズムと同じようにクーデターを起こしたが失敗(ミュンヘン一揆)。しかし選挙事に議席を増やし、与党となり、アドルフ・ヒトラーが首相から総統へとなっていった。その時期に近く「大衆」ができたのだが、法的権利の剥奪という憂き目に遭った。

第3章「全体主義の構造」

そもそも「全体主義」とはどのような構造なのか、「モブ」と「エリート」、さらには「指導者」の役割、さらには内なる敵における戦い、そしてテロルなどを取り上げている。

第4章「全体主義が破壊するもの」

その「全体主義」を破壊する存在もある。どのように「破壊」をもたらすのか、また「破壊」存在はどのようなものかを示している。

第5章「抵抗の拠り所としての「真実」」

全体主義を破壊とまでは行かないものので、その主義に対する「抵抗」もある。その抵抗はどのようなものか、また抵抗に対しての「事実」はどのように扱われるのかについて本章にて分析を行っている。

第6章「「事実の真理」を守り抜く」

全体主義における「事実」はどのように映し出されるのか。またその「事実」は指導者、そしてそれ以外などの立場において、どのように見えてくるのだろうか。その「真理」と守り抜く狙いを綴っている。

「全体主義」を採用している国はわずかながら存在している。その全体主義は果たしてどのように生まれ、なおかつナチズムを含めてどのような「貌」を持っているのか、71年前の著作「全体主義の起源」の深層を見ると垣間見えるのかもしれない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました