重罰化は悪いことなのか 罪と罰をめぐる対話

重罰化は悪いことなのか 罪と罰をめぐる対話 重罰化は悪いことなのか 罪と罰をめぐる対話
藤井 誠二

双風舎  2008-10-24
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この頃凶悪犯罪のニュースが後を絶たない。この度に「厳罰化」というのが叫ばれているが、はたしてそれが犯罪の抑止力になるのかというと必ずしもそうではない。これまで何度も刑法の改正により刑が重くなり、裁判も被害者感情を考慮して重罰化してきたがそれでも犯罪件数は目に見えるほど減っていない。ではこの重罰化はいいことなのか、悪いことなのかについて藤井誠二氏が対談形式で解き明かす一冊である。
Ⅰ.「殺された側の論理」と「犯罪不安社会」のゆくえ
Ⅱ.「厳罰化」を考える
ここでは社会学者の芹沢一也氏との対談である。「女子高生コンクリート詰め事件」や「宮崎勤事件」、「酒鬼薔薇事件」から見た「少年のモンスター化」報道から始まり、それによる被害者への目でディアの煽動、被害者感情の考慮、死刑廃止、刑務所事情、犯罪の厳罰化と言った内容について話し合われた。このところほど書きたいところが多いところはないのだが、全部書いてしまうとキリがないので短めに書こうと思う。
まず本書の主題の「厳罰化・重罰化」であるが、まず厳罰化の標的となったのが「少年法」である。今となっては殺人などの凶悪犯罪については大人と同じように刑事裁判にかけられることはあるが、以前まではそう言ったことが認められずいくら大量殺人を犯しても少年院送致と言ったところまでであった。そのことにより「心にナイフをしのばせて」というような惨劇が起こるようになる。被害者遺族は身内が殺された怒りと悲しみを踏みにじるどころか、家庭崩壊にまでさせてしまうという、二度・三度の屈辱を与えさせるというようなことだって起こり得た。この観点では「厳罰化」は行ったほうがいいが、ただこれが犯罪の抑止力となるというのは一寸お門違いのように思える。また、後半にも書いてあるが刑務所事情というのも考慮しなければならなくなる(収容人員や金銭面の事も含めて)。厳罰化というのは一筋縄ではいかない。
さてメディアの被害者感情の煽動と「厳罰化」というのは切っても切れない関係にある。事実当ブログでも取り上げたか「光市母子殺害事件」はその典型例だろう。ちなみにこれを取り上げた理由は実はこれらの報道に関してBPOにこういった被害者報道を考慮するような申立書を提出された。これに関してメディアの在り方についてはまだまだ考える余地はある。
刑務所事情は藤井誠二氏が非常に詳しく書かれているが、想像できるような軍隊式で、労働を課すようなことがあるが、それに限らず再犯を行わないようにカウンセリングなど行われているようである。しかしこれが功を奏しているのかというとまだ無いと言うほかないだろう(だいたい6割である)。
Ⅲ.「犯罪」映画を読み解くために
Ⅳ.漫画を描くことで見えてきた死刑制度の本質
Ⅲではドキュメンタリー監督の松江哲明氏との対談。Ⅳでは「モリのアサガオ」でおなじみの漫画家郷田マモラ氏との対談である。
ここではⅣを取り上げようと思っている。私自身映画をあまり見ないためⅢの内容について見てもあまり分からなかったためである。趣味をもう一つ増やそうかなと思ったり。
それはさておきⅣでは「モリのアサガオ」を中心に死刑制度について書かれている。私はよく漫画を読むのだが「モリのアサガオ」は全く知らなかった。本書では一部分しか取り上げられていなかったが、死刑制度について非常に的を射ている内容であったと思う。もしあったらぜひ「モリのアサガオ」を読んでみたいと思う。あと余談であるが来年5月に裁判員制度が始まるが、「サマヨイザクラ――裁判員制度の光と闇」というのが「漫画アクション」で連載中であるという。それも同時に読んでいこうと思う。
Ⅴ.罪を重くすれば犯罪は減るのか
Ⅵ.犯罪を防ぐ「懐の深い社会」をつくるために
最後は社会学者の宮台真司氏との対談である。まず殺人の数であるが本書でも書かれているとおり増えても減ってもいない。むしろメディアが多く取り上げることにより、人々が関心を持ち、厳罰化を求める声が大きくなったに過ぎない。とはいえメディアの力というのが恐ろしいもので、関心を増やすことによって法制度、判決そのものを変える。ただ、さっきも言ったが「罪を重くすることによって犯罪の抑止力になるのか」というのは短絡的なのではないかと思う(事実抑止力になっていないとも言えない)。むしろ感情的な要素が強い。また同じように死刑廃止論も然り。では犯罪を少なくするにはどうすればいいのかということになるが、地域ぐるみでそう言ったことを防止する、宮台氏は「共同体的な温情主義が支配する空間(p.159より)」を機能させることにあるという。
厳罰化というのはいささか感情論として述べられることが多い。厳罰化・重罰化についてはまだまだ議論の余地はあるのだが、犯罪の抑止力になるという確証は「得られてはいるものの、それがすべての犯罪に言えるということではない」。このことだけは特に強調しておく。

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