「ビジネス書」のトリセツ

年間1,000冊ものビジネス書を読破している水野氏の真骨頂と言える一冊である。
思えば勝間和代氏らの活躍により、ビジネス書の価値というのが急上昇した。今となってはビジネス書著者だけでも数多くおり、毎日400冊出版される出版業界のなかで明らかにビジネス書のウェイトというのは広がりを見せているといっていいだろう。

それに伴ってビジネス書を書評をする「ビジネス書評家」も誕生し始め土井英司氏小飼弾氏聖幸氏smooth氏鹿田尚樹氏といった大看板も存在するほどにまでなった。ちなみに私はビジネス書用専門ではなくジャンルの問わない、悪くいえば「雑種」の書評家であるが。
さて年間1,000冊読まれている水野氏が考えるビジネス書の「仕組み」というのは一体何なのかというのを本書とともに解き明かして行こうと思う。

Part1「ビジネス書にダマされるな!」
ビジネス書といっても仕事術から人脈術、時間管理術、ノート術に至るまで数多く存在する。しかしそのビジネス書は読みやすさに定評がある反面、その後の実践により価値が大きく違ってくるという難点がある。私がよく読む理論書と違う点はそこにある。理論は実践と対語を成しており、理論と実践の差というのは明らかに大きく、理論を学んだからと言って、実践の場で使えるかというと使えるものもあるのだが、大概は実践の場において使用できないことが多い。
しかしビジネス書はれっきとした実践書であるため読了後の実践が前提となる。
昨今は数多くのビジネス書が世に出ているがそれを効率よく選ぶために書評ブログを使用することを著者は推奨しており、昨年末に話題となった「書評ブロガーマトリックス(本書にも掲載)」にあるとおり、どのようなビジネス書評ブログがお勧めかというのも紹介している。

Part2「ビジネス書が200%身につく読書術」
本章に入る前に各章には4コマ漫画が掲載されているが、大人気書評ブログ「Joshiben(女子勉)―働く女性のためのビジネス書の書評ブログ」でおなじみの勉子さんが描かれたものである。勉子さんにとって書籍デビューであり、今後の活躍が楽しみである。
さて本章の話に戻るがビジネス読書術というのを紹介している。最初にも書いたとおり年間1,000冊読まれているということは読み方にも何か特徴がある、もしくは速読術があるのではと考える人も多いことだろう。本章では著者自身の読書方法についても紹介されているが、それだけではなくブログや仕事における実践や勉強会やセミナーといった所まで紹介している。

Part3「隠れたサインを見抜く「裏読み」術」
読書といっても本の内容全部を読むことではなく「まえがき」「あとがき」「目次」に着目した読書の方法もある。本章では「まえがき」と「目次」に表れている「隠れたサイン」を見破る術を伝授している。

Part4「ビジネス書10大著者の「ここか読み所」」
ビジネス著者は昨今増加しているが、その中でも代表的な著者10名を挙げ、その人たちの特徴を本章では考察を行っている。
今話題となっている勝間和代氏をはじめ、「レバレッジ〜」でおなじみの本田直之氏(ちなみに奥様の田島弓子氏も「ワークライフ・アンバランスの仕事術」を出している)、元祖「Hacks!」の小山龍介・原尻淳一両氏、フォトリーディング・マインドマップの立役者、さらには営業術で名を馳せる神田昌典氏、「さおだけ屋」「女子大生会計士」の山田真哉氏、ブログでも著書でも大活躍の小飼弾氏などそうそうたる顔ぶれである。
著書の特徴のほかに似顔絵も掲載されているのだが、これは誰が描いたのだろうか、素朴な疑問である。

Part5「ベストセラー・ビジネス書「書き方」の法則」
ビジネス書の書き方についてである。これからビジネス書を書きたい方であればお勧めと言えるところであり、水野氏自身今月から全6回にわたって「ベストセラー・ビジネス書がすらすら書けるセミナー」が行われるがそれの意気込みも兼ねてか、そのための教科書的な役割を担っているのかというのはセミナーに行ってみないと分からないかもしれない。

Part6「TPO別必読ビジネス書はこれだ!」
様々な用途に合わせたお勧めビジネス書を紹介しているだけではなく、ビジネス書の系譜からマトリックスに至るまでビジネス書、ビジネス著者の傾向まで綿密に分析されている。

昨今ビジネス書が氾濫をしているといってもいいほど数多く出版されている。それだけビジネスに関して悩み多いといわれている表れなのかもしれない一方で、藁にも縋る思いでビジネス書を手当たり次第で手に取る人もいる。
本書はそんな人にならないようにどのように読めばいいのか、どの本を手に取ったらいいのかという道標を教えてくれる。これからビジネス書を読みたいけれども何を読んでいったらいいのかわからない、喩えて言うとビジネス書という洞窟の中で松明の役割を担っているのが本書であろう。本書は今氾濫しているビジネス書をどのように観たら、そして選んだらいいのかということを分かりやすく教えてくれる道標となる一冊である。