1964年の東京オリンピック~「世紀の祭典」はいかに書かれ、語られたか

今まさにオリンピックシーズンといえる。ロシア・ソチにて冬季オリンピックが行われており、スキージャンプやフィギュアスケート、カーリングなど様々な協議でメダルの期待がかかっており、選手たちも金メダル獲得に向けてしのぎを削っている。

本書は今からちょうど50年前の10月に行われた東京オリンピックだが、当時活躍した著名な作家たちはどのような印象を持っていたのだろうか。本書では「開会式」「観戦記」「閉会式」の3つに分かれてコラムにして表している。

Ⅰ.「開会式」
1964年10月10日に行われた開会式の前後は、「アジアで初めてオリンピックが行われる」という高揚感があった。その一方で作家の中にはスポーツに全く興味がなく、冷ややかな視線を持つものもいた。もっと言うと、自分の政治思想をオリンピックに置き換えて、主張している人もいた。とはいえ、元々ボディビルなどのスポーツを経験していた三島由紀夫をはじめ、オリンピックを心待ちにしていた作家、あるいは実際にオリンピックの開会式の会場に足を運んだ作家もいた。

Ⅱ.「観戦記」
「観戦記」は実際に会場に足を運び、試合を観戦し、見たこと、感じたことを記したものであるが、著名な作家が実際に観戦して、書いているだけに、躍動感もあれば、選手各々の緊張感、さらに会場のボルテージなどがありありと伝わるものである。種目にしても「男子100メートル走」「馬術」「バレーボール」「柔道」「レスリング」「重量挙げ」「水泳」「ボクシング」「マラソン」など様々である。
実際に観戦しただけではなく、テレビからみたオリンピック、さらには選手村の現状、東京と相対する都市・大阪からみた「東京オリンピック」などのコラムも掲載されている。

Ⅲ.「閉会式」
世界が熱狂したオリンピックはやがて終わるもの。東京オリンピックも1964年10月24日に閉会式を迎え、終了となった。その後パラリンピックも11月8日~12日に行われ、オリンピックシーズンは終焉を迎えた。終焉を迎えた際、さらには終焉を迎えたあと、作家たちはどのように感じたのだろうか。「一縷の夢から覚めた」と表現する方、「現実生活では役に立たない」と冷ややかになる方、「日本と世界の差を知らされてしまった」と表現する方など様々である。

アジアで初めてのオリンピックが終わって50年、あれから札幌・ソウル・長野・北京とアジアではオリンピックが行われた。その後も2018年には韓国の平昌(ピョンチャン)、そして2020年には再び日本・東京でオリンピックが行われる。50年の時を経て、日本人はオリンピックに対してどのように見ているのだろうか。現在行われているソチオリンピックを通じてどのようなコラムができるのか期待したいところである。