日本の医療制度 ―その病理と処方箋

日本の医療制度にまつわる問題は様々である。一つには「医師不足」、「新薬遅れ」、「混合診療」などが挙げられるが、本書ではその中から特に「新薬遅れ」「混合診療」について日本における問題の全容と海外での対応を考察している。

「新薬(承認)遅れ」は最新医療という観点では私たちの生活と直結している所は多い。しかしよくよく考えてみると日本の薬事的な事柄が多い要因として、「安静」と言った長期的な治療を行わず、なるべく短期間で治療を行い、すぐさま現場に復帰しようという姿勢があるため薬に関してよく使われるのは日本くらいである。

さらに「混合診療」についても論じられているが本章の巻末には平成19年に1審、21年に控訴審が行われた混合治療にまつわる訴訟の判決文を原文のまま掲載している。インターフェロン療法と自己リンパ球の活性化移入療法の療法を診療したことによって混合診療と認められ、保険の給付が受けられないとして訴訟を起こしたものであるが、両方の判決文を読むと、混合診療が認められるかどうかのグレーゾーンの深さ、「規則」や「法律」を強く重んじる日本医療の在り方そのものが投影されているようだった。

私たちの生活に直結をしていながらも、その問題の幅・深さともに大きいと言える医療問題について、資料を数多く用いて検証をしているだけに、日本の医療問題を細かく、それでいて明確に見ることができる。提言ばかり述べてばかりいる本より、「現状」を事細かに見ることができるので様々なとらえ方もできる。