本当は面白い「日本中世史」 愛と欲望で動いた平安・鎌倉・室町時代

歴史の中で最もよく知られているものとして「戦国時代から江戸時代初期」、あるいは「幕末から明治時代」がある。これらは特に小説・マンガ・アニメ・ドラマなどで数多く取り上げられており、その類の本も多い。

では、本書で取り上げられる「中世」と呼ばれる時代はどうなのか。列挙してみると、大河ドラマや文献などはいくつか存在するものの、幕末や戦国ほどではない。

しかし中世には中世の魅力が存在する。その日本における「中世」と呼ばれる時代として平安・鎌倉・室町時代の魅力についてピックアップしている。

第一章「大唐帝国の終焉と中世日本の始まり」
「大唐帝国(だいとうていこく)」は、中国大陸における「唐」王朝のことを表す。この「唐」王朝は中央アジアにまで及んだ時期もあり、そう呼ばれたという。そういった時期は日本における奈良から平安時代にかけて言われてきたのだが、その時代の中で日本に仏教などの文化が伝来し、唐王朝からの影響を色濃く受けたといわれている。しかしその「唐」王朝も907年に滅亡したことにより、日本独自の文化を醸成していった。それが「中世日本」のはじまりと言われた。

第二章「『源氏物語』と『平家物語』を政治史として見る」
平安から鎌倉時代にかけて数多くの文学作品が出てきたのだが、その中でも本章にて取り上げられているのが、平安時代につくられた「源氏物語」や、鎌倉時代につくられた「平家物語」を取り上げられている。いずれも政治的な背景が映し出していることから、その2冊から政治史を抜き出して考察を行っている。

第三章「京都の論理と関東の不満が正面衝突」
京都と関東の関係を映している時代として鎌倉時代が上げられる。その後江戸時代も同じような構図が出来上がるのかも知れないが、ここでは「中世」にフォーカスを当てているため、鎌倉時代のみとしている。
幕府は鎌倉にあり、初期こそ源氏の政権を掌中に収めていたのだが、源氏と北条氏の対立が起こり、後に源氏が断絶、その後将軍は傀儡化し、執権にある北条氏が実験を握ることになった。その源氏・北条氏と京都にある天皇家との関係は良好だったのかというと、微妙な関係になる時期もあった。もちろん京都の天皇家でも、天皇即位の争いもあれば、後鳥羽などの「上皇」の存在もあり、それぞれ複雑な関係にあったという。

第四章「後醍醐天皇の夢を足利義満が完成した」
時代は鎌倉幕府が倒れ、足利尊氏が室町幕府を成立したところに移る。その時に南北朝の対立が起こり、南北朝時代ができた。その中で北朝と南朝の関係とはどのようなものか、そして足利尊氏の野望とは、さらに室町時代末期から出てきた戦国乱世はどのようにして起こったのか、そのことについて取り上げられている。

第五章「外交と宗教から見た中世日本を総括する」
第四章までは将軍や天皇との関係から中世を取り上げてきたのだが、本章では日本と中国大陸、さらには朝鮮半島との外交や仏教の宗派における中世のことについて取り上げられている。特に前者は鎌倉時代に起こった「元寇」が中心である。

「中世」とひとえに言っても、9世紀から15世紀と約700年もの歴史が存在する。その中で起こった出来事を並べてみてみると、天皇家の歴史はもちろんのこと、幕府はその中の諍いについても色々と分かる。もちろんまだ解明されていない所もあるのだが、それでもなお中世は掘下げてみて見れば見るほど面白いということを本書にて物語っていると言っても過言ではない。