「こころ」は遺伝子でどこまで決まるのか―パーソナルゲノム時代の脳科学

ありとあらゆる考えや感情などを司る「こころ」はいったいどこからきたのか、未だに完全な解明はでていない。

本書もあくまで一説ではあるが、「遺伝子」という観点から「こころ」はどう決められるかというメカニズムを追っている。

第1章「こころはどこにある?」
本章ではまず脳や遺伝子(ゲノム)のメカニズムの概要を見ながら「こころ」とは何かについて迫っている。ふと疑問に思うのが「こころ」は遺伝子で決められるのか、ということにある。おそらく遺伝子のことについて知らない読者の多くはそう思ってしまうだろう。
本章ではその疑問を払拭するように一卵生双生児や兄弟の違いなどを引き合いに出している。一卵生は遺伝子としてメカニズムが近いといわれている為、あながち遺伝子が心に関係するかもしれない、と思ってしまう。

第2章「遺伝子ターゲティングが拓いたこころの研究」
「遺伝子は何を読みとるのだろうか?」
本章では遺伝子と「こころ」がいかに直結しているのかを証明するべく、様々な実験を行っている。
記憶や神経などについては脳科学でも頻繁に使われているが、これは遺伝子でも言えるのではないかと本章を読んで思った。

第3章「こころの病に挑む」
今世紀になって「こころの病」が急増する現状となったのだが、精神医学を始め進化はしているものの、追いつけていないのが現状である。精神安定剤もあるが、大概はカウンセリングを続けることによるしか方法がないとさえ言われている。
本章ではその「こころの病」を遺伝子で直すことができるか、について模索をしている。

第4章「パーソナルゲノム時代の到来」
人間は機械のように同じようなことを他人が行える例は稀である。行動もそうであるが、顔の形や筋肉などの外見もまた然りである。
その因果関係の一つに「遺伝子(ゲノム)」が挙げられる。本章では遺伝子からかかりやすい病気を解析してくれる機関を紹介するとともに、遺伝子は病気にかかる傾向がどこまでわかっているのかについて分析をしている。

第5章「ゲノムで性格や相性がわかるのか」
これまでは遺伝子学や医学など少し取っつきにくい章が多かったのだが、本章はがらりと一変して身近な「相性」や「性格」と言ったところに着目している。
本章の冒頭では今ではすっかり定着をしている「血液型性格診断」について苦言を呈している。その一方で遺伝子から性格を診断できるのではないかと考え、本章では遺伝子からどのように性格を見るのかについても分析している。

第6章「ゲノム脳科学と近未来」
最近では個人情報の流出が後を絶たないが、究極の「個人情報」こそ「遺伝子」なのではないか、と言っている。これは強ち嘘ではなく、一般的に言われている「個人情報」は「住所」や「名前」、「電話番号」を言っているのだが、遺伝子では「体の特徴」「性格」「思考」など真の意味での「個人情報」なのである。

遺伝子の研究は他の研究に漏れず進化を続けている。元々細胞や遺伝子に関しては医学や生物学とともに研究が進んでおり、これから新しい研究結果などがでてくる。それが私たちの生活に直結していくのか、本書はその期待を募らせる一冊とも言える。