幸福の秘密―失われた「幸せのものさし」を探して

イースト・プレス 石井様より献本御礼。

「悲しみの中に、幸せは潜んでいる。」

おそらく日本人の中に「幸せ」と感じることは、一昔前に比べて少なく感じてしまう。以前経済に関する本にて書いたのだが、モノが豊かになるに反比例して心の豊かさが少なくなっているように思えてならない。
本書はほんとうの「幸せ」を10をもとに探しながら綴っている。

1.「ずっと忘れられていた「幸せの秘密」」
アメリカでも日本と同じように「鬱状態」の人が増加しているのだという。日本にしてもアメリカにしても、モノの充足は飽和状態にある。しかし最初にも書いたとおりそれが「心の充足」が蔑ろにされているように思えてならない。本章ではある夫妻のことを綴っているが、私たちが忘れていた「もの」を持っている感じがした。

2.「幸せのものさしはいつ歪んだのか」
「幸せ」とは何なのだろうか。
それについては人それぞれであるが、本章のタイトルにある「幸福のものさし」が歪んだことについて、個人そのものの考え方の変化が大きな要因として挙げられている。

3.「幸せになるためにたった1つ、必要なこと」
「良心」や「善心」がなぜ、幸せとなるのだろうか。あるいは「モラル」とはいったい何なのか、そしてどのように育てるのか、について書かれている。

4.「ときには“不公平な”愛を注ごう」
「不公平」や「不平等」を「悪」とし、「公平」や「平等」を「善」とする風潮が今も昔も流れている。しかし本章ではその風潮とは一線を画して、誰でも平等に愛を注ぐのではなく、自分との距離が近い人に愛を注ぐことを伝えている。

5.「セックスは人を幸福にするか?」
男女との関係の幸福について「セックス」はどうなのか、について論じている。「セックス」というと「理性」や「倫理」、もしくは「宗教」の隔たりなどがあり、そのことによる議論やいざこざの対象になることがある。
本章では「セックス」と「幸福」についてを論じている。

6.「正義の前に母親を守りなさい」
よくヒーローもののアニメや実写には「愛と正義の~」という言葉をよく聞く。しかし「愛」と「正義」のどちらかしか大事にできるものがなかったとしたらどれを大事にするのだろうか。本章ではそれを論じている。

7.「「愛ある仕事」こそが人を幸せにする」
言わば「労働観」の話である。
労働というと「生活のため」「苦しいもの」という考えが頭に浮かぶ人が多い。しかし本章では仕事、そして労働に対してどのように接したらよいのかについて書かれている。

8.「パンとバラの花をわれらに!」
「美しさ」と「幸せ」、それらは相反するものであり、とりわけ「美しさ」は表出すと「虚栄心」そのものを出す印象が拭えない。
「幸せ」と「美しさ」を毎日どのようにつきあったらよいのかを本書にて記している。

9.「人生最後の日々に何を思うか」
人生最後の日はいつになるのかは誰にもわからない。数十年先にもなれば、もしかしたら明日その日が来ることさえあり得る。本章では「生き方」、もしくは「徳」を持つことについて綴っている。

10.「幸福な死、そして悼むということ」
人間として生きている、もしくは動物として生きているのだから必ずといっても「死」はまとわりつく。しかし哲学上、もしくは宗教上における「死」の考え方は様々である。本章では「死」に対する考え方、「幸福な死」に関してエピソードを元に綴っている。

「人間であること」

人間だからでこそ、感情と理性がある。人間であるからでこそ「幸福」を考える。「幸福」そのものの価値やモラル、ものさしはそれぞれ違うが「幸福」そのものを考えさせられるきっかけを生んでくれるのが本書であると私は考える。

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