「警察」というと最近では賞賛や敬意よりも「非難」の標的になってしまっている。警察に関する批判や非難の本に関しては巷の本屋では見ないことがないほどである。
本書は警察にまつわる一冊であるが、前述のそれとは毛並みが異なる。それは世界の歴史の中で「警察」がいかにして誕生したのか、本書では古代ローマ時代から現代に至るまで幅広い時代における「警察」の存在について紹介している。
第一章「古代ローマ「警察」制度」
警察制度が誕生した古代ローマ時代では絶対的な階級制度の中だった。
その制度のなかでの治安維持や警察の扱われ方は「嫌われ者」という点で現代に通ずるものがある。
第二章「中世の「警察」制度」
時代は大きく跳んで「中世」ヨーロッパ時代として11世紀のフランク王国の警察制度について紹介している。
第三章「中世の都市の発展」
中世ヨーロッパの都市は「要塞都市」と呼ばれるが如く都市の周りには高い壁が囲まれていたのだという。冷戦時代の「ベルリンの壁」に近い形と言える。
「要塞都市」と言われるだけあって外部からの攻撃は遮断できるのだが、家禽などの疫病や悪臭などが多発したのだという。
第四章「嫌われるウィーン市警備隊」
十五世紀のウィーンでは「ウィーン市警備隊」が誕生したが、この警備隊は悪名が高かった。その大きな理由には警備隊の取り締まりではなく、警備隊のモラルの低さにあった。もっとも安月給の警備隊は酒売りなどの副業に手を染めていったことが大きな要因とされている(当時は酒類販売自体が禁じられていた)。
第五章「パリ「警察」の成立」
十六世紀半ばのパリは「絶対王政」の時代であり、そのときの警察は王族や「ブルジョワ」と呼ばれる権力者階級の夜回りや自警が中心であった。いわゆる「夜警」である。
しかしその絶対王政の中でも王権争いに巻き込まれることもあった。
第六章「警察大改革前のイギリスの旧警察」
舞台をイギリスに移す。
警察大改革が行われたのは19世紀前半に入ってからのことである。それまでは2つの革命で国家は大きく変化したものの、犯罪に対する調査などはすべて私費をかけて行う、もしくは犯罪に対して自分の身は自分で守るしかないほどの有様であった。
第七章「「ありがたき警察」と警察国家」
「ありがたき警察」はあまり聞き慣れない。今の日本の警察はその通りか、と言われるとそうは思えない状態にある。
日本警察の現状についてはここまでにしておいて、「ありがたき警察」は15世紀頃にフランスで誕生した。そのときは秩序や治安が悪かったため、被害者になることの多い一般市民は、警察当局に依存するしかなかった。その警察が近代に入り、権力が強くなり、警察による恐怖政治、監視社会となっていった。
世界的にも「警察」そのものの歴史は2000年以上にも及ぶ。その警察は批判の標的になる時代もあれば、依存の対象になることもあった。私たちの生活の中で安心して暮らせる役割の一端として警察があるのだが、その歴史は権力者に左右されながら行き着いた産物と言えるのかもしれない。
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