今となってはほぼ「あたりまえ」の存在であるサラリーマン、かく言う自分もサラリーマンのはしくれであるが。サラリーマンはいつごろ誕生し、どのような背景があったのか、そしてサラリーマンそのものがどのように進化していったのか、本書は現在のサラリーマンの原型を映し出している。
第一章「通勤電車に乗る」
通勤電車と聞くと大概は満員電車にすし詰めの状態で通勤、仕事終了後の帰りも同様の状態になり、そして家に帰る頃にはそれによりクタクタの状態になる。
この満員電車は現在では度重なるダイヤ改正や増便、増線などにより満員は多少緩和されているものの、未だにその状態は保ったままである。
満員電車の歴史は古く、物理学者の寺田寅彦が1922年(大正11年)の9月に「電車の混雑について」を取り上げた時代から続いている。本章ではそれ以降の電車混雑や電車広告、あるいは電車について取り上げられている。
第二章「午前の勤務につく」
会社によってまちまちであるが、大概は朝9時に始業のベルがなり、仕事が始まる。その始業前の出社、もしくは終業後の退社時にはタイムレコーダーにタイムカードをかける会社も少なくない。最近ではセキュリティーカードを使って始業・就業時間を管理するところも出てきている。本章ではその出社・退社時に使うタイムレコーダーの歴史について紹介しているが、70年以上の歴史があるのには驚いた。
第三章「仕事に追っかけられる」
仕事に追われる状態は今も昔も変わらない。私も本職で仕事に追われることは少なくない。
で、本章であるが、仕事に追われることそのものではなく、「社員食堂」や「通信」の歴史を取り上げているが、もっとも特徴的なのが前者のことが中心になっている。「社員食堂」というと「質素」なイメージがもたれやすいが、最近ではタニタなどのヘルシーな食事も扱われる。ちなみに本章で取り扱われている「社員食堂」は「ベルトコンベアー式」などの技術の歴史を表している。
第四章「やっと一日の仕事が終わる」
仕事が終わる時間は、仕事の量や質によってまちまちである。しかし最近になっては夜遅くまでかかることも少なくなく、終電までかかることもある。
終業後の楽しみというよりも、銀行などで使われる「マイクロフィルム」などの記録媒体の歴史が中心である。
二十世紀最大の産物であるサラリーマン。そのサラリーマンがいかに進化していったのか、そしてサラリーマンが日常使われるものがいかに進化していったのか、戦前からの長い間たどった道がよくわかる一冊である。
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