劣化する日本 再生への10のシナリオ

日本には様々な問題を抱えている者の、それらを解決に向けて動いているとは言いにくい。もっとも政府は政権の奪い合いや増税などのせめぎあいばかりに集中し、それ以外の政策や対策などを打つ暇がないほどである。対策が後手後手に回っていくうちにそれらの問題はもはや危機的な状況に陥っている。だからでこそ本書の最初に「手遅れは許されません」と書かれている。

本書は「BSフジ」と呼ばれるBSデジタル放送で「BSフジLIVE PRIME NEWS」が昨年10月24日~11月4日の10日間にわたって特集した「日本再建への10のシナリオ」にて10のシナリオそれぞれに識者がインタビュー、もしくは対談形式にて問題と解決方法を提言している。

シナリオ1「少子高齢化ー悲観せず、強みとして生かそう」
日本の平均寿命が延び、かつ出生率が現象の一途をたどっていると言われて久しい。最新の統計を見ると若干出生率が延びているため、少子化は幾分和らいでいるようには見える。その少子高齢化を憂いては仕様がない。
本章では「生めよ、殖やせよ」ではなく、少子高齢化時代からでこそ日本にある「強み」を生かすこと、日本人のあり方を考えることを提唱している。

シナリオ2「社会不安―安心・安全社会は雇用の安定から」
日本人はつくづく安定やノーリスクを求める民族である。雇用や景気などが良くも悪くも「不安定」な状態となるととたんに騒ぎだす。
その社会不安解消の一つとして「雇用の安定」や政治に対する信頼を取り戻すシナリオ策定を提言している。

シナリオ3「社会保障―社会保障改革で日本を元気に」
社会保障は昨今から叫ばれ続けており、シナリオ1の「少子高齢化」とともに問われている者であり、かつ人口減少を見ると共通している。
本章では年金や福祉などの「社会保障」のあり方について提言を行っている。

シナリオ4「エネルギー―地球規模の視点を忘れるな」
おそらく本書のなかでもっともホットな分野といえる。夏頃になると関西電力などを中心に電力不足に陥っており、さらに原発事故に対する不信感も強く「反原発・脱原発」などの動きも見せている。
しかしそのエネルギー政策も「太陽光」などの自然エネルギーにシフトしつつあるが、生産にも限界が生じており、「八方塞がり」とも言える状況にある。
本章では世界的変化を中長期的に認識し、あらゆる変化に対応しながら攻めていく姿勢を提言している。

シナリオ5「財政危機―増税や年金減額などの「苦い薬」も必要」
おそらく政治的な関心の一つとして「増税」がある。ギリシャや西欧諸国では財政危機が叫ばれている中、日本も他人事ではなく、借金自体1000兆円前後あり、いつ財政崩壊してもおかしくない事態と言える。
本章ではその財政危機対策として「国民にも痛み」を持つのを知ること、さらに市場そのものの恐ろしさを知ることを提言している。

シナリオ6「成長戦略―危機こそ成長に向かうチャンス」
バブル崩壊以後、日本は「低成長」の時代が続いている。その中でも「マイナス成長」になったときもあり、急成長を続けている中国に追い抜かれ、さらにインドやブラジル、ロシアも迫っている状況に陥っている。しかも前までのシナリオから見て危機的な状況に陥っている。
本章ではその危機を脱する対策について提言を行っている。

シナリオ7「外交・安全保障―正しい歴史観・国家観を持て」
政府や国家がもっとも取り上げるべきことであり、かつ政府や国家でしか取り組めないのが「外交」であり「安全保障」であると考える。民間でできること、もしくは地方にできることはそれぞれに任せておいた方が良いにも関わらず、国に頼ろうとしている所も否めない。
それはさておき、本章では国が担うべき根幹である外交や安全保障政策について歴史観や国家観を持つことを中心に提言している。

シナリオ8「国と地方―国に頼らない自治体を創る」
おそらくメディアは地方自治にまつわることを中心に語られているようだ。その渦中にいるのは大阪市長の橋下徹氏である。橋下氏の政治手法について賛否両論はあれど、「改革」をするうえで必要な方であることには間違いない。
国に頼らない自治体づくりは震災以降急務になりつつあるが、その地方自治体のあり方について本章では補助金や自立などの提言を行っている。

シナリオ9「教育―日本人としての立ち位置を定める」
教育問題もまた政治・民間など様々な所から関わる問題の一つである。近年は「学力低下」が叫ばれている中、日本の教育はどこに向かうべきか、本章ではアイデンティティや経済・金融教育を中心に提言をしている。

シナリオ10「政治とリーダーシップ―政治家に必要な三つの力」
「今の日本の政治家にリーダーシップがない」
とどこかで聞いたかわからないが、そういった声があるほど、日本の政治家への信用度が低い。それどころか新聞やTVから出る支持率を窺うばかりである。
では日本の政治家に必要な力はどのような物があるのか、本書では「三つの力」として提言を行っている。

最初にも言ったとおり本書は「BSフジLIVE PRIME NEWS」の特集として10日間にわたって取り上げたものを書籍化した一冊である。その特集が組まれる中で「本来ある番組の姿」に対して疑問を持ち、自らの番組を「発信・提言」の原点を見直して取り上げられたのだという。政治や経済、社会に対する提言についての関心を募らせただけではなく、「番組の使命」などにも触れた一冊であった。

コメント

  1. noga より:

    現在の世界は、過不足なく成り立っている。
    我々は、五感を使ってその事実を確かめることができる。
    矛盾があれば、事実関係を調べることができる。
    過去や未来の構文を使えば、同様にして過去や未来の過不足ない世界を頭の中で描くことができる。
    過去と未来の感覚は得られないが、考えとしては成り立たせることができる。
    矛盾があれば、訂正できる。矛盾を訂正しなければ、空論・空想となる。
    つじつまの合う夢か、それとも、つじつまの合わない夢か。
    辻褄のことは考えないで、ただ、自分にとって望ましいか、望ましくないかを判断する。
    これが、夢をみた選挙民は阿呆か、利口かの分かれ目になる。
    http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
    http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/

  2. 匿名 より:

    「呼び捨てされ激怒」の橋下市長に反論 小林よしのり氏「常軌を逸してないか?」
    http://www.j-cast.com/2012/05/01130942.html

  3. 蔵前 より:

    >nogaさん
    コメントありがとうございます。
    また、リンク拝見いたしました。
    >辻褄のことは考えないで、ただ、自分にとって望ましいか、望ましくないかを判断する。
    >これが、夢をみた選挙民は阿呆か、利口かの分かれ目になる。
    その分かれ目がどうなるのか、私たち選挙民に委ねられていることですね。

  4. 蔵前 より:

    >名無しさん
    コメントありがとうございます。
    リンク先拝見いたしました。
    これに対して橋下氏も反論しているようなので、どのような展開になるのか静観した方が良いかもしれません。

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