企業のみならず政治などでも「改革」は多かれ少なかれ進んでいる。しかしその「改革」は合理的に「失敗」することが多い。本書ではそれを「改革の不条理」と定義しているが、「失敗」するにも必ずと言っても良いほど「原因」が存在する。その「原因」とはいったい何か、そもそも「改革」とはいったい何か、本書はそれらの分析を行っている。
第1章「「改革できない理由」は4つある」
本章ではその改革できない理由として4つの理論を紹介している。
1.「取引コスト理論」
2.「エージェンシー理論」
3.「所有権理論」
4.「プロスペクト理論」
一見すると難しい名前の理論が並んでいるが、簡単に言うと、損得や関係、責任、制度など複雑なものが絡み合うこと、さらにそこから生まれる「歪み」によって不条理は生まれ、失敗に陥ってしまう。
第2章「「改革の対象」とは何か」
改革を進めるための第一歩として「対象」とは何かを明確に示すことである。その対象は最初の時点で明確になったとしても、「空気」や「関係」の干渉により当初の目的を失い、明快な「論理」の武器も全く歯が立たず、「空気」という名の魔物に押しつぶされていってしまう。
第3章「「改革策」に潜む不条理」
どんなに優れた改革策が出ていても実際に行い結果を出さなければ机上の空論でしかない。
本章では実際に行われた「医療制度」「教育」「人事」にまつわる改革の「不条理」と「失敗」について考察を行っている。
第4章「「改悪」に導く不条理」
「改革」や「改正」に対して根強く反対する者はそれを「改悪」として定義している。もっとも日本国憲法や教育基本法の改正に反対する人々がそう定義していることが多い。
実際に改革を起こすべく動いているなかで謝ったプロセスを踏むことにより、改革が「改悪」という形に陥ることがある。本章ではその改悪につながる構図について考察を行っている。
第5章「「改革の主役」は誰か」
第2章で改革の対象の考察を行ってきたが、本章ではその対象を改革する「実行者」「主役」といったところから考察を行っている。主導者は経営では社長や会長、政治では大臣や首相がその主役を担うのだが、その主役に求められるのが「自律的」であることが挙げられる。その「自律的」であることにより不条理を取り崩す、もしくは防ぐ役割を担う。
第6章「「改革の不条理」を越えて」
改革には不条理は付き物である、と言われるかもしれない。しかしその「不条理」によって失敗の要因になることも少なくない。その不条理を越えていく力として「人間力」が挙げられる。
今日も政治・経済問わず様々なところで「改革」が行われている。しかしその中には日本独特の要因もあれば、共通して起こる要因により失敗してしまい、取り返しのつかないこともある。本書は改革をやるに当たりはじめに失敗の事例を取り上げることによって予防策を見いだしてくれる一冊と言える。
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