USTREAMがメディアを変える

最近では動画サイトの生放送やダダ漏れが広がりを見せており、TVでは放送できないようなもの・内容も放送されているだけではなく、ヴァリエーションもTVでは収めきれないほど広いジャンルの放送が行われている。その役割には今月始めにサービス総称を変更した「niconico(ニコニコ動画)」や本書で紹介される「USTREAM(略称:ユースト)」がある。
本書は世界的にも注目され、かつこれからのメディアのあり方を変える(もう変えているか)USTREAMの世界とこれからの課題について現状とともに追っている。

第1章「ユーストリームという世界」
「USTREAM」が誕生した歴史から説明する必要がある。
「USTREAM」は2007年にアメリカにて生まれた動画サイトであるが、YouTubeとは違い生放送を中心とした動画サイトであった。日本に上陸し、使われるようになったのは2009年頃からであるが、そのころには友人の美崎栄一郎氏が出版企画そのものを「ダダ漏れ」する企画を行った時である。
その生放送サイトは派生してスティッカムやニコニコ生放送になり、既存メディアを凌駕するほどにまでなった。

第2章「ユーストリームの可能性」
少し前に強制起訴の罪から無罪確定し、今となってはまた権力奪取に意欲を燃やす小沢一郎氏が会見やインタビューの場にニコニコ生放送を選んだのは周知の事実である。
その大きな理由として既存メディアに帯びている思惑や記者そのものの態度などが癪に障ることがあるのかもしれない。
それはさておき、「生放送」はリアルタイムで色々なことを伝えるツールと言えるが、公序良俗に反するものも放送できるという負の側面も存在するのだという。

第3章「ユーストリームとツイッターの相乗効果」
USTREAMで放送されることによってTwitterを使って意見をすることが出来る側面もある。ニコニコ生放送ではTwitterを使わずしても直接コメントが出来る所がある。生放送をすることとリアルタイムで意見を聞くことが出来るため、放送効果も高い。それだけではなく、最近ではスマートフォンが急速に拡大しており、電波の届くところであればワンセグよりも便利に生放送を見ることが出来る。
しかしUSTREAMには負の側面としてあるのが「当日しか見ることが出来ない」ところにある。ニコニコ生放送はその欠点を補うため「タイムシフト視聴」も取り入れられているが一定期間しか見ることが出来ないため、完全に負の側面を克服できた訳ではない。

第4章「ユーストリームがビジネスを変える」
とはいえ既存のTV番組やCMよりも制作費用は機材費用のみとなるためぐっと安くなる、機材費用を自前で用意できるなど、場合によっては費用のかからないため、費用対効果が既存メディアと比べて歴然としている。そのため、プレスリリースや製品情報やイベント開催など、マーケティングツールとして大きな役割を担うことが出来る。

第5章「ユーストリーム番組制作のポイント」
ではUSTREAMなど動画の生放送をするにはどうしたら良いのか、という方法のポイントがわからない。本章ではポイント程度であるが、アドバイスを行っている。事実USTREAMでの番組制作補助を行う業者も出ているかどうかはわからないが、無かったとしてもいずれその業者は出てくるだろう。

第6章「ユーストリームがテレビを殺す」
東日本大震災が起こったとき、生放送のツールとしてUSTREAMを使用した事例もある。TV回線が使えない中でインターネットを経由したUSTREAMを利用して、ニュースを見たという人もいた。
ましてや地上波TVでは見ることの出来ない番組やジャンルをUSTREAMやニコニコ生放送を見ることができ、かつ既存メディアでは「テレビ離れ」を増長しいてしまっている。

第7章「横たわるユーストリームの課題」
とはいえUSTREAMなど動画生放送をする際の問題点も存在する。現在でも動画共有サイトで横たわっている音楽などの「著作権」もあれば、プライバシーにより写してはいけないという「肖像権」も存在する。その両方の権利を承諾する、もしくは肖像権の場合はモザイク処理をすることによって初めて安全に放送することが出来る。
また一度放送したものも著作権が存在しており、許可無く「二次著作物」が作られる可能性があるため、権利者の立場で著作権も知る必要がある。

USTREAMはメディアそのものを破壊するのか、それとも新たな創造なのか、あるいはその両方を担うのか、発展している現在でもまだ未知数と言える。USTREAMも含めて動画生放送は一大メディアとして台頭するのか、もしくは泡沫の夢と消えてしまうのか、それは動画生放送サイトだけではなくそれを使う番組制作者や視聴者の考えに委ねられている。