ツーリズムとポストモダン社会―後期近代における観光の両義性―

1989年の「ベルリンの壁崩壊」以降、東欧を中心に「ポストモダン」と呼ばれる社会に変化をしていった。観光もまた様々なところから考察、そして変化をしていき「観光社会学」の学問まで誕生するほどまでなった。本書はその観光と「ポストモダン社会」の関連性について「観光社会学」の学問のみならず、映画作品とともに考察を行っている。

第1章「「ザ・ビーチ」の憂鬱」
まず「ザ・ビーチ」について取り上げる必要がある。
「ザ・ビーチ」は2000年にレオナルド・ディカプリオ主演の映画であり、アレックス・ガーランドが1996年に同名の小説を原作とした作品である。私小説であるが、観光を中心にした作品であり一人旅で隊にやってきた男が奇妙な男と知り合ったことにより、伝説のビーチに訪れ、日常とかけ離れた世界に酔いしれると言う話である(もっとも核心的な続きはあるが、私も含め映画を見ていない人に対してネタバレになるためここでは割愛する)。本書で考察を行う観光社会学の核となる題材であり、かつ次章で述べる「虚構観光」にも大いなる関連性を秘めている。

第2章「地域の虚構化と観光化」
では「虚構観光」とはなにか。それは映画やアニメなどのストーリーやノスタルジックを観光によって味わうものと定義されている。これはアニメや映画の舞台に直接足を運ぶ、俗に言う「聖地巡礼」と似ているのだろうか。もし違いがあるとすればどのような違いがあるのか。
そしてもう一つ「虚構」や「観光」の観点から本章では原宿や由布院、長崎についても取り上げている。日常でありながら、空間そのものが「非日常」を投影しているがごとく日常から離れられる空間を作り「観光」になるよう作っている。

第3章「観光文化と他者性」
とはいえ観光文化は「非日常」を作るとはいえ、昨今和田となっている「エコ」や「伝統」に触れ、体験する旅行が増えている。これらの観光のことを文化そのものを観光名物にすることから「文化消費スタイル」と名付けられている。

第4章「後期近代の観光社会学へ向けて」
近年はインターネットの隆盛により情報があたかも濁流のようなスピードで流れる。その中で現地でしか得ることの出来ない一次情報を得るための消費社会としての「観光」があるのかもしれない。

観光は今も昔も変わらないものであるが、観光の概念は時代とともに変化を遂げていく。「ポストモダン」と呼ばれる社会ではどのような「観光」が変遷していったのか、本書ではそれを表しているのだろう。

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