生きてるだけでなぜ悪い? 哲学者と精神科医がすすめる幸せの処方箋

本書のタイトルを見るとキリスト教の根本にある「原罪」を連想してしまう。原罪とは、

「罪が全人類に染み渡っていて罪を不可避的にする状態の中に、全人類が誕生して来る状態」wikipediaより一部改変)

のことを指す。
ちなみに本書はそのような宗教めいた一冊ではなく、むしろ私たちの世代に向けて「辛口メッセージ」を送るような対談集である。

第一章「結婚なんかしなくていい!」
「草食系」と呼ばれて久しいが、最近では結婚どころか恋愛による、女性に対する興味がない「絶食系」も出てきている。
結婚にまつわる考えは人それぞれであるが、「結婚」は人生における重要なステータス・価値であるという考えは薄れてきており、かつそのような「常識」も変化している。

第二章「就職なんかしなくていい!」
高校や大学を卒業しても就職できない、というのもあるが、あえて「就職しない」という選択肢を選ぶ人も少なくない。だからといって進学もせず「ニート」になる人も私たちの世代のみならず、企業の急激な変化についていけず「ニート」になる中年も多い。
それだけではない。大学を卒業してから「起業」をして新しい仕事場をつくる人もいる。「就職」そのものは絶対通るべき道、避けて通れない道だとは限らない。

第三章「金持ちなんかにならなくていい!」
金持ちへの願望を持つのは誰でもある。その一方で貧乏への抵抗もなく、ましてやお金持ちになってやりたいこともない。そういう意味では日本は恵まれている。創刊が得ると「お金」の価値は低落化してしまい、代わりの価値は「お金で買えないもの」にシフトしているのだという。

第四章「常識なんかなくてもいい!」
「常識」は誰が作ったのだろうか、誰なのかはどうでもよいことだが、その「常識」も日々変化する。それだけではなく人それぞれ異なる。自分のモノサシを相手に対して振りかざす手段として使う言葉であるが、その常識に関して両者は疑問を呈している。

第五章「生きがいなんかなくていい!」
「働きがい」や「生きがい」を求める人は少なくない。かく言う私もその一人である。
目的を持って生きるというよりも、それ以上に自分が人生をかけてやりたいこと、あるいは「使命」だと思うことをやることがなによりも充実したものになる。
しかし「働きがい」そして「生きがい」ははじめから見つけられるものなのだろうか、そして追い求めて見つかるものなのだろうか。そうではなく色々と「やってみる」ことによって「つくられる」のではないのかと本章では呈している。

第六章「人間関係に悩まなくていい!」
人間関係は偶然の産物であるが、その人間関係を大事にすることはビジネスのみならず、人生の中で重要な要素としてある。しかしその人間関係によって精神的に病むほど「悩む」人も少なくない。
しかし人間それぞれ性格も、思考も、志向も、嗜好も異なるため「関心」するにも「関心しすぎない」ことが大切であることを本章では説いている。

生きることの「善悪」というよりも、むしろ様々な悩み、現状を哲学・精神医学の立場から斬っているというものである。しかしいずれも「生きる」ことにおいて大切な要素を解き明かしているため、今一度自分を見直す為のきっかけとなる一冊と言える。