飛行士と東京の雨の森

東京を舞台にしていながら東京独特の喧噪から外れた所にいるような感覚に陥る。それでいてダークかつ寂しさのあふれる様な作品であった。

東京は日本で最も人口が密集した所であるが、心までも近いかと言われるとそうではなく、あくまで「他人」という意識でしかない。それは北海道でもほぼ言えることであるが、その姿を7つの短編小説でありありと映し出している。

話は変わるが、私が初めて東京に来たのは2007年2月、それから就職活動のために毎月のように東京にやってきたのは今でも覚えている。その東京の中で喧噪にまみれて働く方々、そして夜の帳のなかでワイガヤをするサラリーマン、その姿を何人も見てきた。東京に静寂は無いのかとさえも思った。

しかし静寂はあった。夜明け前の時間帯の時のことである。その時の憧憬を思い出させてくれるような作品が本書であった様な気がする。