1969年から約35年もの間にわたり衆議院議員として国政に携わり続けた小沢一郎。頭角を現したのは90年代に「日本改造計画」を発表し、自民党幹事長も歴任した。しかしその裏で「壊し屋」という異名があるが如く、自民党が離れるやいなや「新進党」「自由党」と次々党を立ち上げ、壊していった。その後に民主党に合流した。その民主党では代表をはじめとした要職をれきにんするも、西松建設の献金疑惑により失脚。その後離党し、現在は生活の党の代表として君臨している。
本書はその小沢一郎の側近であり、陸山会事件で逮捕・起訴され、最高裁に上告中である、石川氏から見た「小沢一郎」の素性について綴っている。
第1部 「悪党」登場
第1章 逮捕まで、そして逮捕から
本書を執筆したきっかけは陸山会事件から保釈されてしばらく経った時に小沢一郎氏の私邸を訪ねた時のことだった。その時にはほとぼりを冷めていたのだが、その時でも「小沢辞めろ」コールが鳴り止まない状態だったことに憤慨し、等身大の小沢一郎を映したかったからである。
本書のタイトルである「悪党」は著者自身のイメージではなく「そう呼ばれてもかまわない」という覚悟から来ている。
第2章 悪党の思想と外交戦略
著者が逮捕される前、ある作家と密に連絡をしていた。そのやりとりの中でふと思い出したのが、小沢一郎の対ロ・対中外交についてであった。よくメディアでは小沢一郎のことを「媚中」と揶揄しているのだが、著者からみればそうではないらしい。
第3章 悪党に仕えるということ
著者が小沢一郎の秘書になったのは1996年のことだった。初仕事から小沢一郎に怒鳴られ、その後も小沢一郎の見習いをしていて、様々な所でトラブルに遭い、叱咤されながら政治についても学んでいった。
第4章 悪党の急所
著者、もとい小沢一郎の秘書ほど、素の小沢一郎を観る人は家族しかいないだろう。
小沢一郎の食生活、さらには健康事情まで事細かに綴っている。さらに2011年3月に起こった「東日本大震災」では小沢一郎のお膝元である岩手も被災していたが、震災が起こってからしばらくした時に岩手に赴いた。
第5章 悪党と選挙、大連立
「大連立構想」は小沢一郎が民主党代表になったときに、読売新聞主筆の渡辺恒雄氏らが関与していた事で知られている。その背景だけでは無く、構想が浮かぶきっかけとなった「ねじれ国会」を造らせた選挙戦略の詳細についても綴っている。
第2部 「悪党」解剖
第1章 悪党とキン肉マン
第2部では「悪党」である小沢一郎と実在・架空問わず人物との比較について著者なりに綴っている。一つ目は架空のキャラクターであるが、著者が小学生の時にハマったものとして「キン肉マン」を取り上げている。
第2章 悪党とマルクス
ここではカール・マルクスの比較をしているが、「資本論」ではなく、「ルイ・ボナパルトのブリュメール18日」を取り上げている。その背景には小沢一郎と田中角栄の関係が「ルイ・ボナパルト」の本の一説と重なる部分があったからである。
第3章 悪党とウェーバー
著者が逮捕・保釈された後、ある作家の方と勉強会を行うことになった。勉強会のテキストとしてマックス・ウェーバーの「職業としての政治」を取り上げた。その勉強会の中で政治について腑に落ちないことがいくつかあった。「政治家としてやってはいけないこととは何か」「政治家とは何か」「政党とは何か」、狭い範囲の問題から、やがて政治や国家に関して広い範囲の疑問点へと変わっていった。
第4章 悪党とチャーチル
小沢一郎とウィンストン・チャーチル、その2人は時代や国は違えど、どこかに共通点がある、と逮捕された翌年の新年会で著者はそう感じ取った。小沢一郎本人にも直接聞いたのだが、小沢一郎自身もチャーチルを意識していた節があるのだという。
第5章 悪党とサンデル
マイケル・サンデルと小沢一郎とおいうと、あまり共通点がなさそうに思えるのだが、1200年前に活躍した東北の英雄・アテルイを通じて共通点があるのだという。
第3部 対決
<小沢一郎が語った「原発」「遷都」「復権」>
最後は「対決」と題して小沢一郎と著者の対談を通じて、原発をはじめとした政治的な課題について小沢一郎の考えそのものをあぶり出した。
本書の著者は現在も上告審にて争っている状態で、有罪か無罪か確定していない状態である。しかし無罪であることを信じて今日もまた、検察という名の権力と闘っている。闘っている中で自らの秘書生活で積み重ねてきた糧について、本書を通じて、見出し、今後の人生にどう役立てていくのか、それは著者自身の考え次第であるとしか言いようがない。
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