「美人」と考えるのは人それぞれである。「人それぞれ」である理由は個人の価値観もあれば、美的センスもある。本書における「美人」はあくまで一般的な意味で「美人」である。その「一般的」という理由は「解剖学」や「認知科学」という意味で学問的な観点から指している。一般的な美人について本書では「美術解剖学」というユニークな学問で考察を行っている。
第一章「美しさの秘密は“骨”にあった」
本書のタイトルは「美人の骨格」である。「骨格」というと認知科学のイメージがあるのだが、本書は「美術」における「骨格」である。しかし本章ではあくまで骨組織として頭蓋骨の大きさから、尾骨や頬骨、顎関節など骨のバランスによって美人になるのか、そうでないのかがわかる。
第二章「絵画は骨格で読み解くと面白い」
本書の根幹である「美術」の「骨格」に入ってくる。その前に本書は「美術解剖学」として考察を行っているのだが、美術解剖学そのものの歴史から解説されている。「美術解剖学」が始まったのはイタリアのルネサンス期(14~15世紀頃)に確立された学問である。解剖することで新しい美術を築いていき、よりリアリティのある絵画や彫刻などが創られた。
ルネサンス期に絵画を描くにあたり言われたことで、
「人体を描くときは、まず骨を描きなさい。そして、そこに肉を乗せ、さらにその上を皮膚でおおいなさい」(p.66より)
とある。歴史的な人物を骨格から解剖し、再現をすることで、歴史にも影響を及ぼす作品が色々と出てきたと言える。
第三章「「美人画」が教えてくれる美の変遷」
日本における美術の歴史は縄文時代に遡る。その時は縄文式土器から古墳、彫刻といったものであったが、奈良時代に入ると絵画も生まれた(「法隆寺金堂壁画」)。やがて絵画は巻物や掛軸となり、美術の歴史は紡いできたのだが、その歴史を司る「美術史」という学問が始まったのは明治維新担ってきてからの話である。美術史と同時に西欧で広がった「美術解剖学」も生まれたが、1891年に森鴎外が初めて「美術解剖学」の講義を行ったことからである。
第四章「“美女の境界線”はどこにある?」
「美人」の定義は人それぞれ違うが、それは日本人における「美人」、アメリカ人における「美人」など国々によっても「美人」に関する考え方は異なる。また「美人」の在り方についても「骨格」だけではなく、化粧であったり、顔以外の体の一部分であったりする。その意味では「美女」を含めた美人の境界線ははっきりとするわけでは無く、かつ絶えず変化していると言うのが現状である。
「美人」の定義は絶えず変化していることを言ったのだが、その理由として「骨格」の変化と「価値観」の変化が挙げられる。前者は生活そのものが絶えず変化しており、生活様式で長期的なスパンでへんかする。後者は「流行」によるものが多く、こちらは短期的なスパンで変化する。
本書は「美術解剖学」と言う観点から「美女」や「美人」はどのようなものなのかの考察を行っている。しかし美術にしろ「美人」の定義は正直言って、自分にもわからない。ただ「美術解剖学」という新しい学問を知ったことは何よりの収穫なのかもしれない。
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