明治維新以降「近代国家」が作られたのだが、西洋を中心とした「列強」とは一風変わった変化・経験を積んできた。その大きな原因として、長年「鎖国」を行ってきた江戸時代の経験によるものだという。
日本の経験は、諸外国から見たら「特殊」と言えるような経験だが、どのような根拠で「特殊」と言えるのか、そしてそもそも「普遍」の経験は何なのか、本書はタイトルにある「愛国」「革命」「民主」の観点から日本史を紐解いている。
なお、本書は2010年10月~11月に行われた世田谷市民大学で行われた講演を一部加筆修正を行ったものである。
第1講「愛国 一」
「愛国心」というと、「ナショナリズム」といわれるような「民族主義」の象徴をイメージしてしまうのだが、実際は誰にでもあるものである。
日本における「愛国心」の考え方は18世紀後半頃から「国学」によって誕生した。それ以降、大東亜戦争が終焉するまで愛国心の教育が続いた。
第2講「愛国 二」
日本の近くにある、朝鮮半島や中国大陸における「愛国心」はどのようなものがあるのだろうか。まず中国大陸だが、昔から「中華思想」や「華夷秩序」と呼ばれるような考えが主としてあった。これは中国大陸が世界の中心としてあり、「東夷(とうい)」「西戎(せいじゅう)」「北狄(ほくてき)」「南蛮(なんばん)」と4方向に分けて敵を示した。しかしその考えは「アヘン戦争」や「日清戦争」によって崩され、愛国心に変化を及ぼしたのだが、満州事変以降は「抗日」「侮日」をスローガンに愛国心を示し、戦争を仕掛けた。朝鮮半島似付いては言及はしていないものの、「小中華思想」もあれば、日本における「文禄の役」「慶長の役」による「反日感情」など様々な要素によって「愛国」を培ってきた。それだけではなく、中国大陸に対する「反中感情」もあった。理由は満州族などの侵略が何度もあったためである。
第3講「革命 一」
「革命」というと、「フランス革命」や「清教徒革命」など、西欧の革命を連想するのだが、中国大陸でも孫文が中心とした「辛亥革命」が有名である。では日本は革命が起こったのだろうか。
主なものとして取り上げられるのが「明治維新」である。これについて「革命」かどうかの議論は絶えないものの、近代国家の基礎を形成づけたことを考えると「革命」と言える。この「革命」には前触れがあり、1853年にペリーが黒船を率いて浦賀沖にやってきたことにある。このことにより幕府では改革を迫られ、王政復古を行うようになった。
第4講「革命 二」
前章の続きとなる「明治維新」のメカニズムについて解説しているが、因果関係について科学的な観点で論じている。
第5講「民主 一」
多くの先進国家では「民主主義」を採用しているのだが、なぜ民主主義が採用されるのか、または民主主義国家ではあらゆる観点で「自由」が採用されたのか、その要因となったのが、西洋における「民主主義」の考え方にある。
第6講「民主 二」
日本における民主主義、というと大東亜戦争が終戦を迎え、日本国憲法が制定・施行されてからと思われるのだが、実際は大日本帝国憲法が施行された時、第一回普通選挙が行われた時からのことである。
また、民主主義の基礎となるのが、「公論」と呼ばれるものであり、これは江戸時代末期から使われたのだという。
日本の歴史は革命もあれば、愛国を育んだ歴史もあり、それでいて「民主主義」とは何かについて大きな転換点となった歴史でもある。歴史から、政治学、さらには科学に至るまで学問の幅を広く考察を行った一冊と言える。
コメント