サバからマグロが産まれる!?

タイトルを見るからに奇天烈な一冊のように見える。正直「あり得ない」と思う方も少なくない。しかし著者は15年以上にわたって、本書のタイトルの研究をつづけており、現実味を帯びてきたのだという。元々著者は「魚類発生工学」と「魚類繁殖生理学」を研究しており、繁殖に関する研究を行ってきたのだが、なぜ「サバにマグロを産ませる」研究をしようと思ったのか、そしてどのように産ませるのか、本書はそのことについて取り上げている。

1.「サバにマグロを産ませる!?」
なぜ「サバにマグロを産ませる」事を研究し始めたのか、その理由としてマグロの漁獲による。2010年にはクロマグロが絶滅危惧種に指定されているという。その絶滅危惧を脱出すること、そしてもう一つは、元々クロマグロが「スズキ目サバ科マグロ属」に属する魚である事から、本書のタイトルにある「サバがマグロを産ませる」ことの着想につながった。

2.「どうやってサバにマグロを産ませるか」
ただ、同じ類の科にぞくするサバとマグロはどのようにして産ませるのか、と言う疑問が出てくる。そこで本章では「細胞」や「遺伝子」に着目して、サバにマグロを産ませるメカニズムを紹介している。遺伝子や細胞の話が中心になるので、高校の生物の授業を理解していないと少し難しい所である。

3.「ヤマメがニジマスを産んだ!」
サバにマグロを産ませることの前段階として「ヤマメ」という魚を使ってニジマスを産ませるという実験を行っている。ヤマメとニジマスはいずれもタイヘイヨウサケ属に属している魚であり、サバでマグロを産ませるモデルケースとしてもってこいだったと言える。その結果本当にヤマメからニジマスを産むことに成功した。

4.「精巣から卵? 卵巣から精子?」
ヤマメがニジマスを産む原理としては、人間で言う所の「代理親」と言われるものである。要するにヤマメの中でニジマスの精子・卵子を融合させ、ニジマスを産ませると言う形であるが、これをマグロやサバに転用するとなると、細胞の面から考える必要があった。その中で卵巣と精子の細胞そのものを解き明かし、本章のタイトルにあるあべこべの実験を行った。

5.「希少魚を救うために」
最もサバからマグロを産ませる、あるいはヤマメからニジマスを産ませるといった事は絶滅危惧種の魚を救うために行われていることであり、絶滅からのセーフティーネットを作ると言う目的があった。

6.「20xx年、ついに●●がマグロを産んだ!」
本章を見ると虫食い問題のように見えるが実際の所、まだサバからマグロを産ませることに成功はしていない。と言うよりも、まだまだ実験段階ではあるものの、成功する日は近いと言うことから本章のタイトルを名づけたという。

7.「おわりに」
遺伝子や繁殖の研究から絶滅危惧種を守る、と言うことが根幹にある。その中でサバからマグロを産ませると言う実験がどこまで実用化できるかはまだまだ未知数ではあるものの、必要な事であることには変わりない。

科学は時として難しく、時として奇想天外で、それでいて時として面白い。本書のタイトルを見ると本当に疑いたくもなるのだが、実際に中身を見てみるとメカニズムから理解することができる。そのことから私たちの知らないところに、問題となっているものを解決する道筋がある。そのことを本書を通じて教えてくれているような気がした。

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