「金縛り」の謎を解く 夢魔・幽体離脱・宇宙人による誘拐

私自身そういった体験を一度もしたことがないのだが、なかには「金縛り」の体験をした方もいると言う。「金縛り」とは簡単に言うと、

「動くことができないようにきびしく縛りつけること。恐怖などで体が動かなくなることにもいう」「広辞苑 第六版」より)

という。動くことができないのは辞書の意味では夢に限らず、様々な状況で動けないことを表しているのだが、本書も含めて「夢」など寝ている状況に通じている。本書は心理学博士であり、医学博士である方が「金縛り」がいかにして起こるのか、そのメカニズムを「科学」「疫学」「民俗学」にわたって取り上げるとともに、金縛りにかからないためにはどのような睡眠が必要なのかを取り上げている。

第1章「金縛りの科学」
実は著者も金縛りを体験したことがあるのだという。徹夜の実験が終わった後に眠ったのだが、そこで金縛りの感覚に陥ったのだという。
なぜ人は寝ている途中で「金縛り」に遭うのか、それは「夢の一種」として挙げている論者もいる。もっともそういった論者は心理学やフロイトの夢理論にほど近いものがあるという。
しかし「科学」の観点から取り上げると眼球運動や脳波に関係があるのではと分析している。

第2章「金縛りの疫学」
次は「疫学」、いわゆる「病気」にまつわる所から考察を行っているのだが、実際に金縛りは病気があろうと無かろうと起こる。しかし強いて言えば、はっきりとした病気ではないものの「睡眠麻痺」という形で睡眠障害の一種としてあげられている。とはいえ、原因はまだまだはっきりしていない部分も存在するという。

第3章「金縛りの民俗学」
では、金縛りは現代のものなのか、と言うと、金縛り体験は昔から存在する。どれくらい昔なのかというと、本章で取り上げられているのはドイツ系スイス人の画家ヘンリー・フュースリーが1781年に描いた絵画を取り上げている。

第4章「金縛りをさらに科学する」
金縛りを様々な学問でもって読み解いていくと、「なぜ金縛りが怖いのか?」という疑問を持ってしまう。何なのかと言うと、想定もしない事象にあることが、全身に緊張感が抜けている睡眠の時間に起こってしまうことから「恐怖」が植え付けられる。その「恐怖」は外で起こっているのでは無く、自分自身の夢によって形成づけられている。

第5章「夢は怖いか楽しいか」
「夢」にも色々な種類があり、良い夢もあれば「悪夢」と呼ばれる様な夢も存在する。私も寝ている時には何度か夢を見るのだが、大概は何かに追いかけられている夢が多い(仕事の性だろうか)。しかし「夢」を色々と取り上げてみると、「悪夢」になることが多いのだという。

第6章「いい「睡眠」、わるい「睡眠」」
「夢」は睡眠の段階で見えてくる。では金縛りから脱する、あるいは「悪夢」から脱するための対策として「いい睡眠」を心がける必要があるのだが、どのようなものなのか、何時間眠れば良いのだろうか。睡眠時間は人それぞれのため、平均的に表すことは難しいのだが、「寝だめ」がダメなこと、さらには、よく言われている睡眠方法にはウソが多いため騙されてはいけないと言うことを伝授している。

金縛りについてあまり知らなかったのだが、夢に関連すると言うこと、さらにそれが病気なのかどうか不明なこと、そして昔から起こっていると言うことが判明できた。しかしまだまだ金縛りには謎が残っており、それらが解明するのにはまだまだ時間がかかると言うことも本書を通じて見えてきたと言える。