ファッションビジネスの魔力

昨月28日に「TGC(東京ガールズコレクション)」が開催された。ファッションビジネスとして、イベントとして日本を代表するものとして取り上げられたのだが、これについての経緯は「東京ガールズコレクションの経済学」と言う本で詳しく紹介されているので、ここでは割愛するのだが、ファッションビジネスは他のビジネスとは違った「魔力」があるという。その「魔力」とはいったいどのようなものなのだろうか。本書はファッション業界の中枢にいる人物の立場から論じている。

第1章「日米ファッションビジネスの違い」
著者がファッションジャーナリストとして活躍した当時、単身アメリカに渡り、バーニーズのことについて何度も取材を行った。もちろんバーニーズが東京進出したときの事について取材したのだが、その際に本章のタイトルにあるビジネスのあり方についての「違い」に気がついた。その「違い」とはいったい何なのかを商習慣などの観点から取り上げている。

第2章「デザイナー成功の条件」
世界で活躍している日本人デザイナーは少なくない。そのデザイナーが国内外で成功するためにはどのような人物なのだろうか、そしてデザイナーと人間との関係はどのようなものか、そのことについて取り上げている。

第3章「プロのバイヤーを育てる」
ファッションビジネスには、バイヤーの技術が不可欠である。そのプロ・バイヤーをつくる・育てるにはどうしたらよいのか、本章ではアメリカで行われている産学連携・実学をもとに取り上げられている。

第4章「東京発世界に向けて」
著者がアメリカの取材から帰国し、「東京ファッションデザイナー協会」を設立し、東京から世界に向けたファッションビジネスを発展させようとした。その一環として「東京コレクション」を開催したが、組織運営の難しさと盟友の死を転機に協会の長を退任したという。

第5章「念願のマーチャンダイジング」
退任後、百貨店の神様に出会い、それをきっかけに松屋デパートの取締役となった。実際に販売の最前線に立ち、実際にマーチャンダイジングに触れることになった。本章ではその体験談について語っている。

第6章「お客様本位の企業を目指して」
最前線に立ち、様々な改革を行ってきた。その改革は「お客様本位」になることである。もちろんそれは部下の指導もさることながら、後進の育成にも同様の形で行っており、現在のイッセイ・ミヤケでも行っている。

国内外のファッションビジネスを触れ、自らも最前線に立つことで、ファッションビジネスを知り尽くしたが、おもしろさを知ると同時に、魅入られる「魔力」を感じ取ることができた。そして現在もファッションビジネスの中心で動き続けている。その軌跡を描いた一冊である。