ダンディズムの系譜―男が憧れた男たち

「ダンディズム」という言葉をたまに聞く。何なのか辞書で調べてみると、

「粋や洗練を好み、それを態度や洋服により誇示してみせる性向。一九世紀前半、イギリスの上流階級の青年たちに流行した伊達(だて)気質に始まる」「大辞林 第三版」より)

とある。しかしこれは辞書的な意味合いであり、ダンディズムのとらえ方は各々異なると言える。ただ「渋さ」や「反骨・反逆」「革命」といった概念があるのは間違いない。本書は個人によって受け取り方が異なる「ダンディズム」について歴史上の人物を取り上げながら考察を行っている。

第Ⅰ部「ダンディズム誕生前夜」
「ダンディ」と「ジェントルマン」と並べてみると一見同じように見えてしまう。しかし「ダンディ」は最初にも書いたダンディズムそのものであり、「ジェントルマン」は「紳士らしく礼儀をわきまえ,相手を尊重するさま(「大辞林 第三版」の「紳士的」より)」を行う人のことを表している。「ジェントルマン」についてもっと根本的なものを追ってみると、本書では中世ヨーロッパ時代から存在している「騎士道」の精神に通ずるものがあるという。

第Ⅱ部「ダンディズム列伝―その栄枯盛衰」
「ダンディズム」という概念が誕生したのは18世紀後半から19世紀初頭であった。第Ⅰ部にて「ジェントルマン」を取り上げているのだが、元々懐古趣味における「完璧なジェントルマン」を理想にしてできたものだという。しかしそれが実践され始めたのは18世紀末期のフランス、およびロンドンであったのだが、人物としては「ボー・ブランメル(ジョージ・ブライアン・ブランメル)」という人物が始まりだった。ちなみにブランメルはファッションの権威であり、なおかつ現代におけるスーツ・紳士服の基礎を築いた人物でもある。それからフォーマルの礎を築いたエドワード・ブルワー=リットン(リットン卿)をはじめ、18世紀から20世紀にかけて独自のダンディズムを築き上げてきた人物を紹介している。

第Ⅲ部「現代のダンディズム像」
もちろん近代のダンディズムと現代のダンディズム像は異なる。それがどの点で異なるかというのを本章にて取り上げているが、そもそも服装が「カジュアル」になっていること、そして女性・男性から見る「男性像」のあり方まで変化している。またその変化について著者自身の考えについても述べている。

「ダンディズム」は今も昔も通用するのかというと、私の考えであるのだが、まだまだ通用する部分もあるが、廃れている部分も多いのではないかというのがある。その理由として近代ヨーロッパにて構築されてきたダンディズムから大きく変化した現代の中でそれが通用するとは限らないからと考えていた。しかし本書を通じて「ダンディズム」も服装はもちろんのこと、たたずまい、さらには各国の考え方など、次々と要素を取り入れながら、はっきりとした決まりがそれぞれ異なるものの変化し続きながら、存在するということを知ることができた。「ダンディズム」の昔だけではなく「今」も知ることのできる格好の一冊と言える。