女の庭

女は色々な表情を持っている。その表情は表に表われているものもあれば、まったく表われないものもある。いわゆる「表と裏の表情がある」という言葉が使える。しかもその女性が何人も集まると、表と裏の共存する表情が無数に表われ、それが「息苦しさ」となる事も往々にしてある。

本書はかつて同級生だった5人の女性が一同に再会し、ともに恩師の葬式に立ち会った。そしてその5人の女性は来年も同じ故郷で会うことを約束したのだが、その過程の中でそれぞれに言えない「秘密」と「表情」が隠れていた。その隠れているものを描いている。官能的な要素もあるのだが、それ以上に女性の「表裏」のある表情と感情が共存している含みのあるやりとりが非常に印象的であり、男性の自分から見ると「女は怖い生きもの」ということがありありと分かる一冊である。ただ先程も書いたのだが、露骨ではないものの官能的な要素も含まれているのでそれに抵抗のある方はあまりおすすめできない。

また本書には表題作の他に「嫁入り前」という作品も収録されている。こちらは表題作のようなドロドロとしたものではなく、初めて知る嫁ぐ前の人の感情、そしてその娘を心配する母親の表情が非常に印象的だった。