ブラック企業2―「虐待型管理」の真相

以前「ブラック企業~日本を食いつぶす妖怪」にてケースとともに取り上げてきたのだが、本書はその続編と呼ばれる一冊であり、「ブラック企業」と呼ばれる企業には、ある企業戦略にあったのだといい、意図的に社員を虐げているのだという。
本書はそう言った経営戦略とともに、労働相談の現場を通じて浮き彫りにしている。

第1章「わかっていても、入ってしまう」
ブラック企業の求人傾向については前作でも取り上げられていたのだが、本章でも改めて取り上げられている。実際に「日本型雇用」「正社員雇用」と呼ばれているシステムを悪用して、大量に若者を雇い入れている傾向にある。しかしそういった企業にはネットでもうわさなどで「ブラック企業」ということは容易に判明できるのだが、植木等の「わかっちゃいるけど、やめられない」よろしく、ついつい入ってしまう人も少なくない。その背景としてやる気もってあえて入社をする、騙されて入社するといったことなどが挙げられるという。

第2章「死ぬまで、辞められない」
ブラック企業の中には、過労死・過労自殺させるまで辞めさせないようなところもあるという。しかも噂で聞いたのだが、過労死・過労自殺を行ったとしても翌日には社員たちが何事もなかったかのように業務をするような風潮にある。しかもそういった話もなしに、自殺をした社員の机も撤去されて。
ほかにも「死ぬまで」というのは自殺に追い込むばかりではなく、社会活動できないような病気を追うまで使い倒すというような状況企業もあるという。本章ではその手口について取り上げている。

第3章「絡め取り、絞りつくす」
「ブラック企業」と呼ばれる存在は別に中小企業だけではなく、大企業にもあるという。しかも「カリスマ」と呼ばれる経営者が経営している会社でも「ブラック」な要素が存在しており、その下にいる社員たちはまさに絡め取り、なおかつ絞りつくされているという。それについて入社理由はもちろんのこと、その企業のトップの講演内容・発言などから来ているという。

第4章「国家戦略をも浸食するブラック企業」
政府はブラック企業に対する政策を実施しているのだが、それまでは「法律の抜け穴」のごとく、抜け穴を突いて社員を搾取するような手口もあれば、実際にはブラックな企業ではなくとも、一つの部署だけブラック化するというような手口もあるのだという。ほかにも以前「嘘と絶望の生命科学」という本でも取り上げたのだが、「ブラック」という名は大学院や研究所にも使われてきているのだという。

第5章「なぜ取り締まれないのか?」
先日「ABCマート」で従業員に違法な長時間労働をさせていたとして、労働基準法違反の疑いで書類送検されたニュースがあった。氷山の一角に過ぎないものの、過重労働による取り締まりはようやく行われてきたといえる。しかしなぜ今まで取り締まれなかったのか、それは適正な労働を行うための法律「労働基準法」がいわゆる「ザル法」にあったのだという。

第6章「奇想天外な「雇用改革論」」
本章における「雇用改革論」は2009年の元日にあった「朝まで生テレビ」という番組で国務大臣を勤めた竹中平蔵氏の「正社員撤廃論」である。その撤廃論について擁護する論者もいるのだが、本章ではそれについて徹底的に批判している。

第7章「ブラック企業対策――親、教師、支援者がすべきこと」
著者がブラック企業をなくすために3つの方法を提示している。

1.法律を守らせるための社会的サポート
2.「モグラたたき」にならないための会社全体の改善
3.企業を超えた「共通の基準」の確立(いずれもp.236より)

もちろん労基法の改正などマクロの対策も必要になってくるのだが、現時点で労働者はもちろんのこと親をはじめとした周囲の人々がいかにして「異常」を察知し、守っていくべきか、その方法について提示している。

政府もようやくブラック企業に対する対策を策定し、第5章でも述べたように取り締まりもされるようになったのだが、まだまだ課題は存在する。もっと言うと「いたちごっこ」のように取り締まっては、また新たな抜け穴を見つけて出てくるようなことの繰り返しなのかもしれない。その繰り返しを元から断つためにはどうしたらよいのか、それは国単位・地域単位・企業単位・個人単位とそれぞれが足並みをそろえて解決してゆく以外方法がないのではと思ってしまう。