問題は英国ではない、EUなのだ 21世紀の新・国家論

昨年の6月23日にイギリス全土で国民投票が行われ、開票しEU(欧州連合)からの脱退が決まった。早ければ2019年3月に脱退することとなるのだが、実際にいつ脱退となるのかはこれからの議論で決まるのだが、なぜイギリスはEU脱退を決めたのか、そしてその後の世界の政治・情勢の構図はどのように変化していくのか、そのことを取り上げている。

1.「なぜEU離脱を選んだのか?」
元々イギリスがEU離脱をメタ理由としては英国としての「矜持」や「威厳」と言ったものがある。もっともEUによってヨーロッパ各国にてコントロールしていることが英国議会では我慢できていなかったことがある。ただ行動のきっかけはそれだけではなく、むしろトリガーとなった出来事がある。それは難民が一気にヨーロッパ各国に押し寄せてきたことにある。

2.「「グローバリゼーション・ファティーグ」と英国の「目覚め」」
EUはヨーロッパ各国のパワーバランスによって成り立っているのだが、その頂点の一つとしてあるのがドイツである。ドイツに実質的に支配されていると見た英国はそこから開放するために独立を考えたという。いわゆる「目覚め」と言う言葉を使って。

3.「トッドの歴史の方法―「予言」はいかにして可能なのか?」
本書の著者であるエマニュエル・トッドは歴史家であるのだが、その歴史と共に国際的な出来事を分析してきた。その有名どころとしてアラブの春などが挙げられるのだが、そもそも歴史的な観点でなぜイギリスのEU離脱は定義づけられているのか、そのことを取り上げている。

4.「人口学から見た2030年の世界―安定化する米・露と不安定化する欧・中」
人口学から見て今から13年後の2030年にはどのような構図ができあがるのか、人口の増減などの観点から取り上げている。

5.「中国の未来を「予言」する―幻惑の大国を恐れるな」
中国はかつて「眠れる獅子」と呼ばれるほどの国であり、経済成長と共にその獅子が目覚めたと言われるようになったのだが、中国は日本以上の高齢化社会の一途を辿っている。その一途を辿っている中で「幻惑」と呼ばれる理由があるという。

6.「パリ同時多発テロについて―世界の敵はイスラム恐怖症だ」
「パリ同時多発テロ事件」は2015年11月13日に起こった。その事件でISILは犯行予告をした。それ以前にも様々なテロ事件を起こし、起こした直後にISILが犯行予告を出すことが多くなったもっともなぜISILが生まれ、そして犯行に及んだのか、そしてその事件を引き金に「恐怖症」に陥っていったのか、そのことを取り上げている。

7.「宗教的危機とヨーロッパの近代史―自己解説『シャルリとは誰か?』」
宗教的にもまたイデオロギーがある。そのイデオロギーはどのような歴史を辿っていったのか、著者が昨年の1月に出版した「シャルリとは誰か?」を分析しながら取り上げている。

イギリスのEU離脱はイギリス自身の問題ではなく、むしろEUどころか世界的な構図が変わるために「問題」視されている。その問題に対して国際的にはどのような対策が行われているのか、国際情勢を見るための参考資料となる一冊である。