秋田犬

今年の2月に行われた平昌オリンピックにおいて、フィギュアスケート女子にて金メダルを獲得したアリーナ・ザギトワが秋田犬が欲しいという声に反応した秋田犬保存会が5月にザギトワにメスの秋田犬が送られたことで話題となった。それに限らず、2012年にはロシア大統領であるウラジミール・プーチンに東日本大震災の返礼として秋田犬が送られたことで話題となった。

日本犬の中でおそらくもっとも世界的に認知されている秋田犬、実は「天然記念物」に指定されており、一部の地域では「檻の中」でしか飼うことができないほどである。その秋田犬はなぜ人気となったのか、そして秋田犬にまつわる伝説などについて取り上げたのが本書である。

第1章「秋田犬はなぜ世界中で人気なのか?―日本的な凜々しさの魅力」
そもそもなぜ秋田犬は世界中で人気なのかというと、そこには秋田犬ならではの特徴があったこと、そして第3章にて詳しく述べる「忠犬ハチ公」伝説がある。本書の冒頭にて紹介したザギトワやプーチン大統領の他にもヘレン・ケラーやマッカーサーなど数多くの方々に愛されているという。

第2章「秋田犬はどこから来たか―史実を読み解き、科学で迫る」
そもそも秋田犬は「日本犬」と呼ばれる日本産の犬の一種であるのだが、元々は江戸~明治時代にかけては「闘犬」として挙げられることがあった。

第3章「忠犬ハチ公の誕生―空前絶後のスター秋田犬、その生と死」
忠犬ハチ公は大正12年に生まれた秋田犬「ハチ」が10年もの間渋谷駅の前で亡くなった飼い主を待ち続けたというエピソードが伝説となり、渋谷駅前に銅像が建てられ、今となっては渋谷駅のシンボルとして挙げられるようになった。しかし元からハチは渋谷に住んでいたわけではなく、秋田県にて生まれ、荷物列車にて上野駅に移動し、本来の飼い主に送られた。飼い主の出勤の時には必ず渋谷駅まで見送り、帰りに迎えるというのが習慣化したことが「忠犬ハチ公」の伝説を醸成していった。

第4章「秋田犬の危機―世界での隆盛、日本での衰退」
秋田犬は危機に瀕していると言われているのだが、その要因として大東亜戦争の中で軍用犬として秋田犬をはじめとして大量に交配したことで、純血の秋田犬が激減したことにある。そのため秋田犬保存会など絶滅を避けるための保存運動が広がりを見せている。

秋田犬は世界的にも人気がある。その一方で天然記念物に指定されており、なおかつ激減の煽りがまだ残っている。その秋田犬はどのような道を辿っていくのか、それを考える資料としての一冊と言える。