逆境?それ、チャンスだよ

PHP研究所様より献本御礼。
1974年に新日本プロレスでデビューしてからちょうど40周年を迎える長州力。デビュー当時は本名の吉田光雄だったが、ファンの公募により長州力に改名された、40年もの間、強さはもちろんのこと様々な名言を残し、歴史に名を刻んだレスラーであり、インタビュー集なども数多く存在する。しかし本書はかねてからあるようなプロレス本とは異なり、ビジネスマンのために自ら何を残すのか、名言の形で取り上げている。

第1ラウンド「壁を越える―言葉の綾だよ、「壁」なんて」
人は誰しも多かれ少なかれ「壁」にぶち当たる。その「壁」というものは著者に言わせれば、サブタイトルにも名言にも記されているが「言葉の綾」であるという。そう考えていくと、できないものを何かと「理由」を付けてしまう。その「理由」こそ、「言葉」を使うわけだから、著者のいう「言葉の綾」ができるわけである。
他にもジェラシーやワンパターンにまつわる名言も取り上げているが、中でも最も印象に残ったのは、

「無事故、無違反で名を遺した人間はいない。」(p.24)

である。これはまさにその通りと言う言葉以外浮かばない。もちろん理由も含めてである。

第2ラウンド「道を切り拓く―今しかないぞ、俺たちがやるのは!」
著者は全盛期のころ「革命戦士」と呼ばれて名を馳せた。著者が起こした革命は元々の新日のみならず、全日にも参戦した経験を持っている。そのため著者はプロレスの世界で様々なものを「切り拓いた」と言える。その変わったきっかけの一つに「危機感」があったのだが、

「プロレス界には非常ベルが鳴っている!」(p.68より)

と言うような形で形容されている。

第3ラウンド「覚悟を決める―リングを怖いとは思いたくない」
プロレスは死と隣り合わせの世界であると言われている。2009年に「ノアの象徴」とまで言われた三沢光晴氏がリング上でバックドロップを受け亡くなるというリング禍が起こっている。他にも練習中や試合中でも死亡事故が起こっているため、相応の覚悟が求められていると言っても過言ではない。
とはいえプロレスラーは「覚悟」をもって戦っているわけだから本章のサブタイトルにもあるとおり「怖い」と思ってリングに立たないという。

第4ラウンド「生き様―俺の一生にも、一度くらい幸せな日があってもいいだろう」
著者の生き様はプロレスラーばかりではなく、プロモーターをして、ブッカー(現場監督)としてと様々である。特徴的な名言を残し、名勝負を残した華々しい人生はまさに充実しているのかと思ったらどん底を味わうことも干されることもあった。40年の結晶が一つ一つの名言がここに残されている。

プロレスの世界に入って40年の月日が流れ、プロレス界のみならず、社会そのものも変化をしている。もちろん著者も様々な「変化」をしながら競争の激しいプロレスの世界を生きのびてきた。本書は単なる名言を残しているわけではない。40年の長きにわたって見聞き、経験、そして戦ってきた自らの「名言」を収めている一冊である。