勝てる野球の統計学――セイバーメトリクス

つい先日夏の甲子園が終わりを告げた。大阪桐蔭が史上初2度目となる春夏連覇を達成し、準優勝であったのだが、秋田の金足農業の大活躍が連日報道されたほどである。さらにはプロ野球でもペナントレースが佳境を迎えている。このシーズンはまさに「野球一色」とも言えるのだが、そもそも野球について「勝つ」ためにどうしたら良いのか、相手や環境などの要素があるのだが、本書はあくまで「統計」の観点からどのようにしたら勝てるのかを提示している。

1.「“無死満塁”は点が入りにくいのか?―野球のセオリーを検証する」
千載一遇のチャンスと呼ばれるような状況にあるのだが、実を言うと、なかなか点が入りにくいのだと著者は指摘している。確かにそういった事例はいくつもあり、逆に二死満塁からの逆転劇とまるでドラマのような展開になったこともある。

2.「ホームランバッターは三割打者か?―「全員イチロー」vs「全員バレンティン」」
どのような比較なのかというと打点、得点を得る時にバレンティンが良いか、それともイチローが良いかというものである。そもそも打席に出て、得点を得ることができるのか、そして三割打者は得点に貢献できるのかも含めて取り上げている。

3.「防御率だけでは見えない名投手の条件―失点に占める投手の責任の割合」
点を取られることは投手のせいだけなのかというとそうではない。野手のエラーなどもあるためである。しかし投手のバロメーターとして防御率があり、その中に自責点がどれくらいあるのかも割り出されている。そのため投手にしても防御率が大事になってくるのだが、名投手は「防御率」で測ることができず、なおかつ勝敗も含まれている。そもそも名投手の条件とはどこにあるのかを取り上げている。

4.「イメージ先行で語られがちな「守備の達人」―失策が多くても守備範囲が広かった」
守備というと鮮やかなファインプレーが先行しがちであるのだが、着実に守ることができることが大きなバロメーターである。もちろんエラーは人間であるため出てくるのだが、その守備について統計的に「良い」「悪い」を測ることができるのか、そのことについて考察を行っている。

5.「真のMVPは誰か?―勝利への貢献度を数字で表す」
MVPこそ数字的に測ることが非常に難しい要素である。そのMVPは統計的に何が必要になるのか、そのことについて取り上げている野だが、そもそもMVPは野球記者たちの投票で決められるため、本書はその投票方法は考慮していない。

「勝つ」ための要素は数多くあるのだが、統計的に見ると、その統計方法によって「勝つ」「負ける」は大きく分かれていく。その統計の奥深さを知ることのできる一冊と言える。