ヤクザと介護 暴力団離脱者たちの研究

今から9年前のこと、フジテレビ系列で「任侠ヘルパー」というドラマが放映され、後に単発スペシャル、さらには映画化にまで至ることとなった。現役のヤクザが介護施設のヘルパーとして働くというものであるのだが、放映当初は「ナンセンス」「非現実的」と捉えられていたのだが、現状としては現役ではないものの、ヤクザから足を洗う、あるいは絶縁をした方々が介護の世界に入るという現状があるのだという。そのため本書では「リアル任侠ヘルパー」なるものができているのだと指摘している。本書ではその「リアル任侠ヘルパー」の実態と、介護業界とヤクザとの関係について研究を行っている。

第一部「リアル任侠ヘルパーの見た世界」
ここではヤクザになり、ヤクザを辞めた後介護の道に進んだある男を追っている。その半生は「ビー・バップ・ハイスクール」や「仁義なき戦い」など映画やドラマ、さらにはマンガといった作品の「リアル版」を彷彿とさせるような衝撃があり、なおかつ、私たちの知ることがなかった本当の「ヤクザ」の世界がよくわかる。

第二部「ヤクザの辞め方」
今となってはヤクザの人口そのものが右肩下がりであり、なおかつヤクザになる人も少なくなってきている。シノギにしても、組に入るにしても、それに見合う人材がいないこともまた現実であるのだが、その組から離脱して「カタギ」と呼ばれる一般人になることもまた非常に難しくなってきている。「暴力団排除」の動きが強まったこともまた要因としてあるのだが、そのほかにも様々な厳しい「現実」が本章では露呈している。

「リアル任侠ヘルパー」もあるのだが、今となっては暴力団排除の動きが強まっている中でここまで暴力団関連について綿密に取材された本はなかなか見なかった。ヘルパーのリアルのみならず、ヤクザの「リアル」がここにあるといっても過言ではない一冊と言える。

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