「孤独な育児」のない社会へー未来を拓く保育

育児の世界では「孤独」と呼ばれるようなものがあるという。もっとも育児をするにも家族の関係から一人でこなさなければならない現実もあれば、保育園などの施設の充実を行っていくなかでも建設反対運動などの抗議が起こるなど子育てを巡る環境は悪化の一途を辿っている印象を持ってしまう。そう考えると子どもを持つことへの環境はまさに「孤独」と言わざるを得ない。その状況から脱するためにどうしたらよいのか現状と共に取り上げているのが本書である。

Ⅰ.「子育ての現場で何が起きているのか」
本章では待機児童など保育園に入ることができない家族と認可保育園ができてきた経緯もあれば、ここ最近のなかで起こっている「育休退園」が起こっていることについても取り上げている。その背景として「待機児童」問題が切っても切れないものがあり、受け皿が足りなくなる事情も理由の一つとしてあるのだが、他にも自治体ならではの背景があるのだが、その自治体と保育園を必要としている家族との対立も取り上げている。

Ⅱ.「社会のなかの保育園」
そもそも保育園問題は今の社会に反映している部分がある。少子化の要因もあれば、労働的な要因、さらには地域性における要因などがはらんでいるようでいてならない。共働きにより、子どもを保育園に入所しようとしてもなかなか入所できないこともあれば、保育園を建設しようにも住民たちの理解が得られず、対立するケースも多々あった。理由は様々であるのだが、主立っているものとして地域の景観が変わることへの忌避感があった。

Ⅲ.「孤独な育児」
育児を行っている方々にも「孤独」が横たわっている出産した後うつの症状にかかってしまう「産後うつ」も10人に1人がかかっており、なおかつ誰にも相談できず、本当の意味で「孤独」どころか「孤立」しながら育児を行わなければならない窮状もある。

Ⅳ.「未来に向けて」
子どもの未来をよくするためには保育園などの充実も含めた保育制度をいかに変えていくかが焦点となる。それは国や自治体などのマクロの単位で行っていくことが必要となってくる。その動きと今後に向けての提言を行っているのも本章である。

保育制度は長らく続いていくなかで変化をしてきたのだが、その変化は現在の社会について行っているのかというと必ずしもそうではない。そこには社会の変化もあれば、制度の変化などあらゆる「変化」に対して抗う人も少なくない。その対立をいかにして解消していくかもまた問題を複雑化しているのかもしれない。