汐凪を捜して―原発の町大熊の3・11

今日で東日本大震災発生から9年を迎える。思えば当時は仕事をしていたのだが、一瞬にして、日常が崩れ去ったことを思い出す。地震発生から繰り返すこと、余震が何度も発生し、一瞬地球の終わりとも思ってしまったほどである。しかしそれ以上に東北をはじめとした地域では自身の他に津波などで甚大な被害を受け、なおかつ福島第一原子力発電所事故により、住み慣れたところから離れざるを得なくなった方々もおり、今日でもまだ帰ることのできない方々もいる。

本書の話になるのだが、福島県大熊町は福島第一原子力発電所がある町であるのだが、原発事故により警戒区域となり、今もなおいくつかの地域が帰宅困難地域とされ、まだ変えることすら許されていない(野上地区や下野上地区など)。本書は震災・原発事故により、行方不明となった少女汐凪(ゆうな)ちゃんとその家族を捜す日々を取り上げている。

第1章「春待つ浜で」
元々大熊町で2世帯住宅で住んでいた家族。まだ小学1年生だった汐凪ちゃんをはじめとした家族は笑顔の絶えない日常を送っていた。

第2章「3月11日 午後2時46分」
これから進級を迎える春の訪れを待とうとしていた、その時、三陸沖を震源とした巨大な地震が起こった。最大震度7、大熊町も震度6強の地震に見舞われた。

第3章「そして、津波が襲った」
地震は前章だけでなく、2度・3度と余震が発生した。その矢先、太平洋沿岸で大津波警報をはじめとした情報が入ってきた。もちろん家族は避難したのだが、学校や仕事などにより、避難場所が異なっていた。さらに津波も第二波・第三波と高い津波が押し寄せるようになり、避難場所を転々とした矢先、汐凪ちゃんらが行方不明となった。

第4章「まさかの原発事故」
さらにこの震災による影響で福島原発が停止した。翌日の15時36分、水蒸気爆発を起こし、福島第一原子力発電所事故が発生した。震災が発生してから最初の日が経とうとしているときに起こった。大熊町でも放射能の影響が出始めたことによるアナウンスが流れた。

第5章「町を出ろってですか!」
3月12日午前6時48分。大熊町全域で避難指示が出され、町全体で避難をすることとなった。大型バスや自衛隊の車両を何十台と用意し、全町民を避難すると言うものであった。その後先述の事故が起こり、警戒区域に指定された。

第6章「声が聞こえた」
全町民の避難は数日かけて行われた、と同時に汐凪ちゃんら家族を捜すことも続けられた。その捜している中で汐凪ちゃんの声が聞こえたのだが、見つかることはこの捜索では叶わず、避難をすることとなった。

第7章「バリケードでふさがれた故郷」
原発事故に伴い、半径20㎞以内が避難指示に、そして一部は警戒区域に指定された。汐凪ちゃんらを捜そうとするも、バリケードでふさがれ、捜索すらできなくなってしまった。その家族の怒りが生まれた。その怒りを東電にぶつけたシーンも本章では取り上げられている。

第8章「町と原発、それぞれの思い」
元々大熊町は福島第一原子力発電所があり、なおかつ住民の中には原発で働いている方もいた。さらに言うと町全体が原子力マネーと呼ばれるう恩恵を受けたとも言われている。そのため大熊町と原発は切っても切れないものだが、それに関しての弊害もあったという。

第9章「汐凪を捜して」
行方不明となった汐凪ちゃんを捜す日々、既に亡くなっていることは分かっていたのだが、遺骨を見つけるために探し続けた日々を取り上げている。

本書が出版したのは2013年の10月であるが、その後2016年の12月にマフラーと小さな首の骨がようやく見つかった。しかしながらまだ遺骨の残りは未だに見つかっておらず、捜索の日々が続いている。震災から9年。もう既に9年が経つのだが、今もなお震災で苦しみ続けている、あるいは探し続けている方々もいる。まだ復興は道半ばであり、震災は今もなお続いている。