ストラディヴァリとグァルネリ ヴァイオリン千年の夢

今年の正月もまた「格付けチェック」が行われたが、その中でも何度か取り上げているお題としてヴァイオリンをはじめとした弦楽器について高級なヴァイオリンか安物のヴァイオリンか、演奏を聴いて選ぶというものがある。よく使われるのが本書でも取り上げるストラディヴァリウスである。何億円、種類によっては何十億円もの価値を持ち、おそらく弦楽器の最高峰であるのだが、同じほどの価値を持つものとしてグァルネリもある。

その2種類のブランドは、いずれも人名からとられており、その2人ともヴァイオリンの名工として知られている。この2人の生涯と作品、そして2人が制作したヴァイオリンの名器にまつわるエピソードを取り上げているのが本書である。

第一章「ヴァイオリンの価値とは何か」

そもそもヴァイオリンの価値は音色で分かるのかという論題から入っている。芸能人格付けチェックでも行われていたことをある意味実験を行ったのだから興味深い。もっともヴァイオリンの価値を引き出せるほどの演奏をするためには、時間がかかり、なおかつ使いこなさないと行けないと言うものもある。さらには長年保存されているのだが、経年劣化といったリスクも関わってくるという。

第二章「ヴァイオリンという楽器Ⅰ~その起源と完成度の高さ」

本章ではそもそものヴァイオリンの歴史を取り上げている。ヴァイオリンの起源は中東諸国にあった「ラバーブ」があり、それがヨーロッパに伝えられ、少し形を変えて「レベック」となった。演奏の仕方は、ラバーブもレベックも、中国大陸にある「二胡(にこ)」によく似ている。立てて弾くものから今のように抱えて弾くようなものになっていきやがて、現在のヴァイオリンになったのは16世紀になってからのことである。

第三章「ヴァイオリンという楽器Ⅱ~ヴァイオリンを構成する素材と神秘」

ここでは、ヴァイオリンの「構成」について取り上げている。ヴァイオリンとひとえに行っても、様々な部品にて構成されている。またヴァイオリンを製作するための木(木材)もまたどのような種類が適しているのかもあり、なおかつ部品によって使われる木材が異なってくる。

第四章「アントニオ・ストラディヴァリの生涯と作品」

よく知られているヴァイオリンとしてはストラディヴァリウスだが、製作したのは本章で紹介するアントニオ・ストラディヴァリとその一族である。特に「ストラディヴァリウス」と銘打っているのは父アントニオと息子フランチェスコとオモボノの3人が製作した弦楽器の事を指しており、17~18世紀に製作された。本書はヴァイオリンを取り上げているが、ストラディヴァリウスはヴァイオリンだけでなく、ヴィオラ・チェロ・コントラバス、さらにはマンドリンやギターも製作したという。

第五章「グァルネリ・デル・ジェスの生涯と作品」

グァルネリ・デル・ジェス(以下:デル・ジェス)は祖父がアンドレーア・グァルネリであり、アンドレーアとストラディヴァリウスは同じニコロ・アマティの下でヴァイオリン製作を学んだ兄弟弟子である(アンドレーアが兄弟子)。

今あるグァルネリのヴァイオリンのほとんどはデル・ジェスが製作したヴァイオリンであり、こちらは18世紀につくられた。もちろんグァルネリというブランド時代はデル・ジェスを含めた一族全員が製作したヴァイオリンなどの弦楽器全てを表している。

第六章「閑話休題」

本章ではアイスブレイクとして著者自身のヴァイオリンにまつわるエピソードや、価値あるヴァイオリンであることの鑑定、さらにはヴァイオリンにおける演奏法などを取り上げている。

第七章「コレクター抄伝」

ヴァイオリンという楽器と言うよりも、ストラディヴァリウスやグァルネリといった名器は億単位の価値があるだけに、魔性の魅力を持っている。その魔性の魅力に魅了された人々は数知れず、王族や財団にまで及んでいる。

第八章「銘器と事故」

名器である先述のヴァイオリンは何百年もの歴史を歩んでいることから数奇な出来事に出会うことも少なくなかった。飛行機事故で失われたこともあれば、巧妙に複製されたこともあり、さらには政治的な出来事にまで持ち出されるといったことまであった。

ヴァイオリンを知れば知るほど、その深みはものすごいことになる。もっともストラディヴァリウスやグァルネリをはじめ、数百年の時を経て活躍している他の名器もあり(アマティやガルネリなど)、今もなおプロの音楽家らに愛され続けている。

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