MaaSをめぐる冒険―ジョルダンの見据える未来像

「MaaS(マース)」はMobility as a Service」の略であり、

ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を1つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念国土交通省 国土交通政策研究所機関誌「PRI Review」69号より

とある。よく電車・バスでの交通情報を確認する。料金の支払いをSuicaやPASMOをはじめとした交通系ICカードで決済するといった動きもまたMaaSである。自家用車以外での交通手段を電車・バス、さらには異なる会社と提携を行い、ユーザーがより便利になっていく動きを今も見せているのだが、そもそもなぜMaaSが動き出し、今交通の場で活躍を遂げてきたのか、その物語を取り上げているのが本書である。

第1章「MaaS胎動前夜」

いま、交通業界は「MaaS」による大変革が起ころうとしている。その大変革の一翼を担おうとするかどうかについては企業の姿勢次第であるのだが、本章ではとある団体の代表の一言によってMaaSの参画に踏み切ることとなった。実際にMaaSはこれからどうなるのかと言うと、現在トヨタ自動車が行っていることの一つとして「モビリティーカンパニー」を引き合いに出して取り上げている。

第2章「MaaSという受け皿づくり」

インターネットが席捲する中で、プラットフォームの重要性は増していくこととなった。とりわけ「GAFA(ガーファ)」と呼ばれる「Google」「Apple」「Facebook」「Amazon」の4社が独占状態となっている。MaaSもまたこの4社が飲み込もうとしている(実際には参戦表明はしていないのだが、密かに研究を進めている情報があるという)のだが、」それを阻止すべく子会社を設立し、日本独自のMaaS開発に着手することとなった。

第3章「親日家が作った「モバイルチケット」」

いまとなっては当たり前に使われている「モバイルチケット」だが、英国など海外では、モバイルチケットはさらに発展しており、そこから日本独自のモバイルチケットを生み出すと行った動きを見せることとなった。

第4章「ラグビーW杯と愛知県豊田市」

このモバイルチケットをはじめ、MaaSのシステムをふんだんに発揮したのが一昨年に開催されたラグビーW杯である。本章で紹介される、「トヨタ自動車」のお膝元である愛知県豊田市もまた、モバイルチケット・モバイルクーポンを広める活動を行う、あるいはラグビーW杯の開催地でもある豊田スタジアムを中心として訪日客へのモビリティーサービスの開発・展開を行った記録を記している。

第5章「北九州、大分、日光、松山、大阪、飯能、そしてMaaSの未来へ」

豊田市から、多くの場所でもモビリティーサービスの導入・検討が進められるようになった。近年では新型コロナウイルスの感染拡大が始まったのだが、そのピンチもチャンスに変えてコロナに即したMaaSサービスの拡充を行う動きもあった。

本書の著者が勤めている会社こそ、このMaaS関連の開発や展開を行っている会社であり、日本版のMaaS開発の苦闘がありありと記されている。MaaSはこれからも広がりを見せることとなるのだが、どのように広がっていくのか、定かではないのだが、良い方向に向くことは間違いない。