今こそ、問われる地域防災力

今でこそ台風シーズンであるため、強い台風が日本に接近・上陸する恐れがあり、近年では甚大な被害を受けることが多くなった。さらに言うと、火山噴火や地震といった災害などもあり、「防災」に対する意識は国・地域・国民一人一人といったレベルでも高まっている。

そこで本書である。本書は「地域防災」として10年前に起こった東日本大震災前後の防災の事情と、地域における災害の連携を事例とと共に取り上げている。

第1章「自主防災組織の誕生と現状」

自主防災自体は東日本大震災以前からもあり、大きなきっかけとしては昭和34年(1959年)にあった伊勢湾台風がある。死者4697人、住宅の全壊が約40000戸と明治以降最悪の台風被害となったことにある。地域としても防災で何をすべきか、自主的に避難の呼びかけなども含めて防災を行っていく組織が次々と誕生している。また「組織」としての現状についても併せて本章にて取り上げている。

第2章「消防団と自主防災組織の実態」

かねてから災害に関して情報を得にくい、あるいは情報を得てもどうしたら良いのか分からないという「災害弱者」も少なからずいる。その弱者を少しでも減らすために、地域組織として何をすべきか、自主防災組織の他に、「消防団」の存在についても取り上げている。

第3章「消防団と自主防災組織の距離感」

もっとも「消防団」の存在は自主防災組織よりも古く、江戸時代の「ムラ」が存在したときからに遡る。この「消防団」の存在は火事などの消防はもちろんのこと、防犯や祭事の実行と多岐にわたっている。ただ自主防災組織とは異なり、消防組織法と呼ばれる法律から構成されるものであるため、ある種公務的な組織としてある。地域で自主的に活動している自主防災組織と公的に構成される消防団とは隔たりがあったのだが、連携を行っている所も少なくない。

第4章「地震災害における連携」

本章では宮城県沖地震、阪神淡路大震災、新潟県中越地震など、強い地震が起こった後の自主防災組織と消防団、さらには地方自治体との連携がどうだったのか、それぞれのケースを列挙している。

第5章「東日本大震災直後の消防団と自主防災組織の動向」

そして2011年に起こった東日本大震災の時の消防団と自主防災組織についてである。それぞれの地域・組織において、どのような役割を担い、なおかつ地震・津波からの防災や救助などを行ってきたのかについて克明に記している。

第6章「東日本大震災直後の地区住民の動向―宮城県東松島市―」

第5章と重なるが、その中でも際立ったところとして宮城県東松島市のケースとして地域住民はどのような動向だったのか、そして地震が起きたとき、津波が起きたときの事も踏まえた意識調査を取り上げている。

この東松島市では東日本大震災により約1100人もの人が犠牲になり、野蒜(のびる)地区や大曲地区では壊滅的な被害となった。この意識調査と被害をきっかけに、どのような防災に改めたのかを取り上げている。

第7章「消防団基本法の制定と連携のあり方」

先ほど消防団は、「消防組織法」にて制定されたと書いたのだが、2013年に、消防団の組織推進の為、新たに「消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律」、通称「消防団基本法」が制定された。ここには団員増加と地域防災力の強化のために何をするのかという制定がなされている。

第8章「消防団お新たな可能性―奈良市消防団―」

消防団のあり方として画期的な活動を行っている所があり、それが本章で紹介される奈良市消防団である。ここでは様々な研修会や訓練など、より実践的、モデルケースなどをもとにして体系的に学び、いざというとき実践しやすくするためのカリキュラムが盛り込まれている。

防災は国や地方自治体、そして個人といった所に着目されがちであるが、細かい所を「地域」でまかなわないと「防災」と言えない。もちろん地域によって自主防災組織、ならびに消防団に関しての意識がバラバラなのは否めない。しかし災害大国、さらには高齢化社会であるからでこそ、防災意識は「地域」が肝心なものになってくる。